第16章 暗雲
「紬から伝言じゃ」
「………もう起きてンのがバレてるのかよ」
「主の相棒じゃぞ?」
「はあ……。カメラでも仕掛けてンのか?彼奴は」
中也は呆れた顔をする。
「『20時前後に戻っておいで』」
「………。」
中也は直ぐに正面の壁に掛かっている時計を見やった。
時刻は19時を回っているーーー
「あと少しか」
そう呟くと中也はゆっくりと寝台に背を預けた。
「森殿を呼んでくるぞ」
「はい」
「あと、主の目覚めを待って騒いでる小娘が外に居るが如何がする?」
「小娘?嗚呼……山吹ですか」
額に手を当てながら「小娘」が誰かを割り出す中也。
「抑も、何で騒いでるんです?」
「紬が『入室を禁止』したからじゃ」
「ああ………そう云うことかよ。チッ。凡て見越してやがるな」
「?」
舌打ちする。
折角、横になったと云うのに中也は再び状態を起こした。
「姐さん一寸、頼みが」
そう長くない中也の話を聞き終えると紅葉は一息吐いて、すくっと立ち上がった。