第16章 暗雲
「紬の命令に同意したんじゃ」
「!」
紅葉はハッキリと云った。
「故に、主を通すわけにはいかん。同意した以上、私にすら他者の入室を許可する権限は有しておらんからな」
済まんのう、と。
紅葉は山吹の頭を撫でる。
いたたまれない空気が流れ始めたせいか。
立原が紅葉に話し掛けた。
「姐さんもお見舞いですか?」
「紬から『任務完了』の一報が入ってのう。中也に嫌味事として報告するよう頼まれたのじゃ」
「流石紬姐さん……意識無い相手にも容赦ないっすね」
「全くじゃ。しかし、中也も中也じゃからのう」
そう云いながら紅葉は部屋へと入っていった。
「……。」
俯く山吹。
「幹部の命令を問答無用で覆せるのはーーー首領以外居ない。これが組織だよ、お嬢さん」
「………。」
追い討ちかけなくてもいいだろ!
と2人を交互に見やり、心の中で叫ぶ立原だった。