第2章 双黒
翌日―――
武装探偵社、社長室。
その部屋の主である福沢諭吉の前に立って、国木田は驚きの顔をしていた。
その隣に立っている太宰はいつも通り、何を考えているのかは全く読めない。
そんな国木田たち2人と福沢の間に挟まれた机の上には本日の朝刊が乗っていた。
『株式会社○○の社長室で23人が死体で発見―――手には拳銃を持つ者も』
大きく取り上げられた見出しを飾る会社こそ、
昨日、国木田たちが張り込みに行った会社だったのだ。
しかし、だ。
「では、社員の者は誰も知らないと?」
「ああ」
「……。」
福沢が国木田の質問に目を閉じて返事する。
護衛の間は異常なかったとなると、死亡したのはそれ以降になる。
市警に情報提供し、捜査協力をしたところ謎の答えが返ってきたのだ。
「しかし、詳しいことまでは知りませんが、社長自らが『新しいプロジェクト』について話していた事は確かに聞きました」
「そうか」
国木田の発言に太宰も頷く。
勿論、社長も疑ったりなどしていない。
残りの会社の社員に市警が事情聴取を行った結果、『新しいプロジェクト』の話など聞いたことが無いと『全員』が答えたのだ。
故に、あれだけ警戒していたライバル社からの奪取を防ぐために探偵社に依頼していたことすらも誰も知らなかったのだ。
それに加えて
「拳銃など、一般人が持つ武器ではないものを扱える様な人間は居なかったと思います」
「この新聞には詳しく書かれていないが、社長だった男とその秘書以外は全員が銃を所持していたそうだ」
「!?」
太宰の顔が険しくなる。
「……そう簡単に手に入らない代物を21丁も持っていたとなると社長だった男の『良からぬ連中』はチンピラなどではなく本物の―――マフィアのことで、少なからずそんな人達に関与していた可能性が高い……と云うことですね?」
「マフィア……!」
確かに。
マフィアの仕業だと仮定すれば、何かの口封じ、或いは報復だと云われても自然な程に話の筋が通る。
「取り敢えず、この件で捜査協力依頼がくれば直ぐに行えるよう手配しておいてくれ」
「解りました」
失礼します、と云って国木田と太宰は退室した。