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【文スト】対黒・陰

第2章 双黒


社長室から出た国木田は険しい顔をしていた。

「あの短時間に20人以上を殺せるなんて相当の手練だろう」

「……。」

太宰は何も云わない。
何を考えているかもわからない顔をしている。


「聞いてるか?太宰」

「聞いているよ。返事に困っただけで」

「ならいい。取り合えず今日の業務に―――……?」


事務室に戻ると何時もと違うざわめきが起こっていた。
そのざわめきの中心にあるのはテレビ…。


「何だ?何かあったのか?」

「国木田さん、太宰さん。これ観て下さいよ」

態々避けて、見える位置を譲ってくれた事務員に甘えてテレビを観る2人。



「「……。」」



そこには港沿い。
倉庫が立ち並んで『いた』場所が映し出されていた。


爆発が彼方此方で起こったような破壊された風景。


『現場は何も残らない程に崩れきっており、現在、警察が原因を―――』


「酷いな。此処まで木端微塵だと………って太宰?如何した?」

国木田の言葉でハッと我に返る太宰。
しかし、その事に気付いたものは居ないほどに。
自然に返事をする。

「派手な事件ばかり起こっているねぇ、と思って」

「そうだな。忙しくなるかもしれん。業務に取り掛かるぞ」

「はあい」


国木田の言葉で全員が持ち場に戻る。


太宰も例外なく自席に座り、長い息を吐いた―――。


太宰には判っていた。
あの惨劇を作り上げた人間が誰か。

―――何の意図を含んでいたのかも、凡て。


双黒による『汚濁』

警察が武装探偵社に捜査の協力依頼などしてきたところで無意味であることを『私』に告げるため――。





「私に対する嫌がらせって訳、ね」





大切な存在である筈の―――。
今回の事件の犯人を置いてきてしまった事に対して自嘲する薄笑いを浮かべてから太宰は業務に取り掛かったのだった。
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