第16章 暗雲
「そんなっ……中原さんを…殺す……お心算ですか……?」
「そんなことあるわけ無いでしょ」
「……。」
キッパリ否定されてストンと座り直す山吹。
「私の死を許さないのに私が中也の死を許すわけがないじゃないか」
目を覚まさない中也の頬にソッと手を当てる紬。
そして
「全く、困った眠り姫だ」
「…もしかして……太宰幹部は……中原さ」
ギュムーーッ
「!?」
山吹が何かを紬に訊ねようとした気配を見せたが、思いっきり頬をつねる紬の行動に言葉が途切れるほど唖然とする。
「これ!止めぬか!紬」
「ちぇっ。まあ、反応がないと詰まらないしなぁ」
紅葉に手の甲をパシッと叩かれて紬はつねるのを止めた。
頭を2回ほど撫でて、離す。
「紬さん」
「!」
「おー。芥川君たち。態々、呼び出して済まないね」
静かに3名が入室してくる。
「兄貴っ……!」
「感傷に浸るために呼び出したわけじゃないのだよ?立原くん」
「……すンませン……」
紬は壁に掛けてある中也の帽子を手に取るとそのまま被り、一緒に掛けてあった外套の内ポケットを漁る。
「あった」
取り出したのは中也の愛用している予定帳だ。
「っ勝手に見ても良いんですか!?」
山吹が声を上げる。
「良いでしょ、別に。私に見られて困る内容なんて此れには記入してないよ」
「!」
紬は内容を読んでるとは思えないスピードでパラパラと頁を捲り、終わると懐にそれを仕舞った。
そして、それを芥川達の方を向く。
「君達2人にはこの部屋の警備をして貰う。いいかい?今からこの部屋は首領、姐さん、私以外の人間の入室を禁止する」
「……もし、中原君の部下が面会を申し出たら?」
「目を覚まさないなら話せない。故に面会なんて必要ない」
「じゃあ、どうしてもって圧してきたら?兄貴、人徳あるからみんな心配してるッすよ!」
「殺して」
「「!?」」
「「「……。」」」
紬の発言に山吹と立原が目を見開き、紅葉、広津、芥川は静かに紬を見ただけだった。