第15章 首輪
「ああ、約束が違うようだからコレは返そう」
「は?」
ヒョイと首輪を外してテーブルに置く紬。
「男からの贈答品なんて嵌めてかえったらどんな目に遭わされるか判ったものじゃないからね」
お茶ご馳走さま、と。
何事もなかったように紬は部屋から出ていった。
慌てて山吹も退室していく。
「待ってください太宰幹部!」
「ん?ああ、ゴメンゴメン。置いて帰ってたね」
はーはー、と乱れた息を整えて山吹は紬に話し掛けた。
「先刻のっ……一体、どうやって……」
「ポーカーのことかい?それとも首輪のこと?」
「両方です」
「簡単なことだよ。ポーカーは始める前にトランプを扱った際に仕込んでいただけ」
「は?」
そう云えばゲームを始める前に触ってたな、と回想する山吹だが
「いや、あの時点でカードゲームするなんて話になってなかったですよね……?」
「何事も常に先を見なきゃ駄目だよ?」
「………。じゃあ首輪は……」
「そっちはもっと簡単なことだ」
「え?」
「私が異能力者だから」
「!」
何処にも無いと云っていた情報をアッサリと溢す紬に驚く山吹。
「まあ、彼の異能については私も聞き及んでいたところだからね。如何にでもなる」
「真逆、初めから……?」
「何も知らない人間に馬鹿にされっ放しは癪に障るからね。私は兎も角、私達の大事な番犬なのに」
ボソッと呟く紬。
「……?」
それを正確に拾うことが出来なかった山吹は頭を傾げた。
そんな山吹にニコッと笑い掛けて紬は自室に戻った。
部屋に入って一番に目に入ったのは明るい髪色をした人物ーーー
「中原さん!?何故、此処に!?」
「あ?」
紬の席に座り、大量の書類を片付けている手を止めて名前を呼ばれた中也は顔を上げた。
「何だ、死に損なったのか」
「残念乍らね」
山吹とは打って代わって驚きもせずに紬はソファに横になった。
「おい……生きてんなら仕事しろや」
「折角、死ねると喜んだのにこの結末だよ?ふて寝する」
「結局、それかよ」
中也は呆れた顔で溜め息を着いた。