第15章 首輪
ポートマフィア幹部執務室の一室
「ヤァ、お待ちしておりましたよ太宰幹部殿」
「お忙しいのに済みませんねえ」
ソファに座るように促され、遠慮なく座る紬。
入り口に2人、Aの後ろに2人。
私兵が立っていた。
「山吹君も座り給えよ」
「いえ、私如きが太宰幹部の隣に座るわけには」
「先刻、中也の隣には座ったのに……」
「うっ………では……お言葉に甘えて」
そう云って隣に腰掛けた山吹を見計らって、もう1人いたらしい私兵がお茶を運んできた。
「いやはや、幹部自らが死にたがりとは驚きを通り越して呆れますよ。首領も何故、貴女のような人間を幹部にしたのやら」
「確かに。今に始まった事では無いのだけどねぇ」
そう云いながら出されたお茶を啜る紬。
そんな紬の目の前にトランプと首輪を1つ、Aが置く。
「此れは?」
「これが私の『異能』です。この首輪は本人の同意無しには嵌められません」
「へぇー。此れを嵌まれば、君の異能で私は死ねるのかい?」
「勿論」
紬はその返事を聞くと愉しそうに首輪を嵌めた。
「「「「っ!?」」」」
立っていた私兵が全員、動揺するのが判る
「ハッ………本当に嵌めるとは……!」
Aはその目を見開いて紬を見た。
「……何故、そんなに嬉しそうなんです?」
その反応に違和感を覚えた山吹が質問した。
「この首輪は本人の同意無しには付けられず、嵌めれば最後。外せません」
「え……」
「そして私の異能『宝石王の乱心』は『首輪を嵌めた人間を寿命と同価値の宝石に変える』」
「なっ……なんですって!?」
思わず山吹が立ち上がった。
「おや?如何したんです?そんな大声を出して」
「説明もなしに首輪を渡すなんて卑怯じゃないですか!」
「卑怯?心外だね。私は『異能』で『死』を提供する 約束をした。充分ですよ。ねえ?太宰幹部」
紬は2人の話が退屈だったのか一緒に置かれていたトランプをパラパラと見て遊んでいた。
「え?ごめん。聞いてなかった」
「貴女って方は!」
「ふはははは!!ポートマフィアの五大幹部の1人がこうも簡単に私の手駒になるとは!!」
Aは盛大に悦びの声を上げた。