第14章 双子
紬が鏡花をチラッと見る。
「っ!」
なにを考えているのか全く判らない目に怯える鏡花。
紬はフイッと背を向けて中也の隣に並んだ。
「棄て駒なんかに興味無いから覚えてないのだよねえ」
「そうか」
「ッ~!!鏡花ちゃんは棄て駒なんかじゃ…!!」
「敦」
敦の言葉を乱歩が一言遮った。
「乱歩さん………」
「ねえ、太宰妹」
乱歩が声を掛ける。
「何です?探偵さん」
クルッと乱歩の方を向いてニコッと笑って返事をする紬。
「君が犯人でしょ?大学生死亡事件」
「「「「!?」」」」
「目撃された黒尽く目の男も君の部下だ」
「……。」
中也は何も云わずに紬を見ている。
最初は驚いた顔をした紬だったが直ぐにフッと笑った。
「御見逸れしました。流石は名探偵と云われているだけある」
「君達の目的は何なの?」
「それを話す心算はありませんよ。私が殺したと云う『証拠』も『事実』も凡て見抜けていれば別の話、ですがーーー」
「ーーー『異能』か」
チッと顔をしかめる乱歩。
「うふふ。では迎えが来たので私はこれで」
「っ!一寸、待て!!貴様、その資料はっ…!!」
国木田が紬を捕まえるべく手を伸ばした。
紬の眼が一瞬、鋭くなったのを乱歩は見逃さなかった。
「よせ、国木田!」
「!?」
乱歩の声に反応はしたものの急には止まれない。
が。
紬の前に立ちはだかり、ガシッ!と国木田の手を握って阻止したのは中也だった。
「今は『停戦中』だ」
「それくらい判っているよ」
国木田の行動を制止しているのに、中也が話しているのは紬の方だった。
「ったく。また太宰と喧嘩しても知らねぇからな?」
「別に。殺す心算なんて無かったって」
「どうだか」
中也が「済まねェな」と云って国木田を解放する。
国木田は乱歩の制止があった為、これ以上は動く気は無いようだ。