第14章 双子
「偽装工作を施したのは先刻のメンバーの中にいたらしい『第一発見者』だ」
「えぇ!?」
紬の発言に驚く敦。
「先刻の慌て振りからして、恐らく彼等が最近出回っている『違法薬物』に関与している」
「いや、でも何でっ……」
「『楽園』が落ちていたそうだね?しかも錠剤の状態だったそうじゃないか」
「!?」
紬は続ける。
「最近、世間を賑わせている異常行動での死亡者の体内に『楽園』の薬物反応が出ているのは知っているんだろう?」
「はい。太宰さんに『楽園』についても聞きました」
「その『楽園』を一般人と思われる若者達がこぞって買い付けていると我々の社会では噂になっててね」
「!?」
「そんな入手困難な『楽園』が珍しい形で転がっているあの研究室で、もしもあの3人が他殺だったならばーーー」
「警察に隅から隅まで調べられてしまい、自分たちの立場が危うくなる………」
「その通り」
紬はパチパチと手を叩く。
「『マフィア』という言葉に怯えていた彼等の様子からするに、事が発覚すれば大事に至ることを悟っているようだ。だから死んだ人間の死因など如何でも良いのだよ、恐らくね」
「………。」
紬の言葉に眉を潜めるも、敦は特に言葉を返さなかった。
マフィアは怖いーーー
初めて遭った時、間違いなく自分もそう思ったから………。
それから特に話すこともなく探偵社の寮に帰ってきていた。
「私は治を診てから帰るとしよう。敦君もゆっくり休み給え」
「有難うございます。お休みなさい」
「お休み」
こうして敦の一日は終わった。