第14章 双子
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あれから数時間。
赤いランプを付けた車が数台去っていく。
建物に静寂が訪れたかと思いきや、職員や関係者が次々と出入りを始め、昼間よりも騒然とし始めた大学の屋上に何時の間にか紬は来ていた。
「あ、こんなところに居ましたか」
「警察とは相性がよくないのでね」
「でも紬さんの手配書とか見たことありませんけど」
「それはそうだ。こういった非合法組織はお高く見届けるに留まる人間と、汚れ仕事を請け負う人間とで構成されているからね。全員がお尋ね者という訳ではないのだよ」
何処からくすねていたのだろうか。
何かの紙の束を見ながら紬は敦に云った。
「じゃあ紬さんはお高く見届けるに留まる人間の方だと?」
「そうなるねえ。これでも一応『幹部』なんて肩書きが付いてるから」
「え"!?幹部ぅ!?」
「そ。」
読み終わったのか。
その紙の束を畳んで懐に仕舞う。
「引き渡した際に、市警は何か云ってたかい?」
「明日の午前中までには判った情報を纏めてお知らせしますとだけ」
「ふーん」
「にしても何かこう……呆気なかったというか……スッキリしない事件でしたね」
「そうだね。まあ、未だ終わりではないからね」
「え」
「『スケープゴート』が一般人とは中々やるねえ」
「え…?」
敦が紬の言葉を拾う。
紬は紙の束の代わりに取り出した端末を操作しながら云った。
「却説。そろそろ治も目を覚ます頃だし帰ろう」
「あ、はい……」
はぐらかされた話しに返事をする敦。
そして、ふと。
先刻も核心に触れる前に途切れた話のことを思い出した。
「そう云えば紬さん」
「何だい?」
「此処に来る途中で話してた事なんですけど」
誰にも見付からないように素早く建物、大学の敷地と抜け出してから敦は紬にその疑問をぶつけた。