第14章 双子
開けっ放しだったせいか。
侵入した部屋は冷たい空気が支配していた。
「あれ?何処にーーー……!?」
敦は直ぐに辺りを見渡して、声を発した。
辺りを伺おうとして、目の前の光景に目を見開いた。
「随分と運動神経が良いんだな」
「なっ……!?」
敦の目の前に立っているのは
首にナイフを当てられている紬と学生らしき男が数名だった。
「っ!君達は………」
その中の見知った人物を見付けて敦は混乱する。
「っ!おい、やべぇよ!コイツら、サツと一緒にいた奴等じゃん!」
「はあ!?ヤクを盗もうっていうチンピラじゃねーのかよ!?」
第一発見者だった生徒2人が敦を見て声を上げた。
「どーなってんだよ!」
「俺が知るかよ!」
「だって『マフィア』を名乗る男が云ってたんだろ!?『彼奴等の死はこの混乱に乗じてごろつきがヤクを盗むための前座だ』って!」
「それは確かな情報だって!『A』が『B2』から聴いたらしいから!だからヤクなんて造るの辞めた方がって心配してくれてたんだぞ!?」
「じゃあ何でサツが来んだよ!?」
「知らねぇってんだろ!!」
生じた混乱は紬に刃物を向けるどころでは無いのだろう。
解放された紬は大声で繰り広げられる会話を愉しそうに聴いていた。
「うふ………ふふふふ……あははははは!」
「「「「「!?」」」」」
遂に堪えきれなくなったのか。
盛大に笑い出す始末。
その声に全員が紬の方を見た。
「なっ……なんだよ急に!」
「いやー。こんなに愉しい気分にさせられたのは本当に久し振りだよ」
笑いすぎて浮かんだ涙を吹きながら紬はニッコリと笑った。
「『マフィア』が怖いかい?少年」
「っ!?」
そんなわけないだろう、と。
威勢よく云い放ちたいだろう本当は。
しかし、彼等は誰一人としてそれをしなかった。
「君達ーーーマフィアに会ったことがあるね?」
「「「「「!?」」」」」
「いや、マフィアまではいかずとも善くない人間とばかり関わっているようだ」
紬が静かに告げる。
その言葉に男たちが少し震え始めた。
「敦君、全員確保し給え」
「はい!」