第14章 双子
「解毒剤は君達が調査していた『死亡した大学生』が所持していたものだ」
「!?」
「現場検証の結果『危険薬物による異常行動』で死亡という説が濃厚らしいじゃないか」
「あの状況と、講師の方の話を合わせたらその見解になるそうです」
「まあ、市警の無能さは置いておいてだ」
「無能……」
太宰より毒舌だな、と。
敦は心で思うも口には出さなかった。
「封鎖が解除されて静まった今しか『動く』好機が無い」
「何の話です?」
「彼等の死を『偽装』した人間が、この件について詳しく知っている筈なのだよ」
「なっ……偽装……!?」
『何故』と。
詳しく訊ねようとした瞬間だった。
ピリリリリ………
「ん?誰だい全くーーー」
着信を告げる電子音が鳴り響く。
紬はぶつぶつ云いながら電話に出ると
直ぐに端末を耳から遠ざけた。
『ーーーーー!!!』
「!?」
「……。」
なんて云っているかまで判らないが、怒鳴っていることだけは判る。
否、あまりの怒りできちんとした言葉になってないのだろう。
その声音が収まるまで耳から離していた紬は、
やれやれと呟いて、端末を元の位置に戻した。
「何で芥川君の端末で中也が電話してくるのさ」
芥川!
敦の全身の毛が粟立つ。
『手前ェが俺の端末を着拒してるからだろうがぁあ!』
「あ、忘れてた」
『着拒だけならまだしも仕事用の端末は机に放置していってるせいで誰も連絡先知らねぇときた……どんだけ俺が連絡してたか判るか?あ"あ??』
「興味ないねえ。大体、私は中也に用事なんか無いんだけど」
『俺だって電話したくてしてんじゃねェよ!ざけんな!』
「じゃあ何の用なのさ」
『首領から『明日午前11時から会議』と伝令だ。重役決める大事な会議だからな!?絶っっっ対に参加しろよ!?』
「判った判った」
『手前ェのソレはサボる気満々の時の返事だろ!いいか!?引き摺ってでも連れてくからな!?』
「じゃあ連絡してこなくてもいいじゃん」
『…こんだけ云ってんのに完全にサボる気かよ………はあ、まあいい。取り敢えず着拒は解除しとけよ』
「はいはい」
ピッ
「全くあの脳筋は怒鳴るしか出来ないんだから」
ぶつぶつ云いながらピコピコと画面を操作し始める紬。