第14章 双子
時刻は午後11時前ーーー
結構な時間を眠っていたんだな、と
真っ暗になった空を見上げてぼんやりと思う敦。
そして、ふと疑問が頭を過った。
「そう云えば貴女は」
「紬でいいよ。『太宰さん』は区別がつかないから」
「じゃあ……紬さんは何故、太宰さんの家に居たんですか?」
「治が最近出回ってるらしいと噂の『危険薬物』の捜査依頼を受けたって連絡を寄越してきたから」
「……矢っ張りポートマフィアが関わってるんですか?」
「薬を広めた云々の話なら『否』だよ」
「え」
あっさりと否認する紬に驚く敦。
本当かどうかと云うよりも、すんなりと答えが返ってきた事にただただ驚いたのだ。
「私達の領域において無断で商売なんて見過ごせるものではないから探ってはいたのだけどね。この事件、それだけでは済まないようなのだよ」
「どういうことですか?」
「どうもこうも死にかけたでしょ?君も」
「!?」
敦はその言葉にハッとする。
「私の部下も数名、原因不明の死を遂げている」
「そんな……!でもっ……紬さんは解毒剤を持っていたじゃないですか!?」
「それはーーー」
紬がため息を着く。
「治が私の忠告も聞かずにこの件に関わるって聞かないから急遽用意したものだ」
「!」
「そして、本来なら私の相棒の分だったモノを君に譲った。治が頼むから致し方無くね」
「あっ………済みません……」
「……。」
素直に謝る敦をジーっと見て
クスクス笑い出す紬。
「?」
「冗談だよ」
「えっ……?」
何がなんだか分からない敦は愉しそうに笑っている紬が次の言葉を発するのを待った。