第13章 協力
それから3時間ーーー
事態の大きさから閉鎖されたにも関わらず、その近辺に屯している学生たちに聴き込みをしていた。
『特に変わった事は無かった』
『急にあの研究室に在籍している同級生の羽振りが良くなった気がする』
『あの研究室は頻繁に実験やってて真面目な連中が多い』
『最近、ヤバい薬を造ってる噂がある』
『学生っぽくない人があの研究室に出入りしているのを目撃した』
『私は何も知らない』
『そう云えば彼等、『金になるバイト』を始めたって云ってたようなーーー』
聴き込みを続ければ続けるほど怪しいような、そうでないような。
何方とも判別付けがたい意見が錯誤し、敦は混乱していた。
「矢っ張り『危険薬物』による異常行動なんですかね?」
聴き込みを一旦、止めて誰も居ない広場のベンチに太宰と並んで座っている敦は、携帯端末を見ながら口を開いた。
太宰の指示で、既に社会に流れている、この事件に関する最新の情報を確認しているのだ。
其処には、敦達が得られた程の情報は一切無かった。
『亡くなった3人とも成績優秀だった』
『実験ミスで死ぬなんて有り得ない』
『善い人だったのに』
学生に聴き込みをしていた報道陣が得られた答えは極々ありふれたモノだけだったようだ。
それもそうだ。
敦が混乱する程の情報を喋ったのは全員、女性。
ーーー太宰と連絡先を交換したがる程の人間ばかりが困惑させるような事をチラつかせて話した。
故に、信憑性は低い。
「死因の事を云っているのかい?」
「?そうですけど」
その仕事を押し付けた太宰も端末を操作していた。
が、此方は連絡機能の画面ーーー
誰かとメールをやり取りしていた画面を閉じて太宰は敦の方を見た。
「死んだ理由は判っている」
「えぇ!?」
「只、何で『彼等』だったのかーーーそれが判ればもう少し詰められるのだけど」
「えっ……ってことは危険薬物の異常行動なんですか?」
「違うよ」
「!」
先程から可能性の1つとして挙げていた仮定をハッキリと否定する太宰。