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【文スト】対黒・陰

第13章 協力


それと同時に第一発見者3人を別室へと移動させる警察官。

太宰は敦の元へと歩いていく。

「何だい?敦君」

「此れ……」


周囲の確認作業が済み、司法解剖に回すために遺体を運び出す作業に移ろうとしたところのようだ。
遺体を担いだ人間は敦達の反応に一瞬、動きを止めたがそのまま遺体を移動させ始めた。

敦が指差したのは、その遺体が有った場所だった。


「!此れは……」


太宰がハンカチを取り出して、指されたモノを拾い上げた。
ーーー落ちていたのは『桃色の錠剤』


「何かの薬ですかね?」

「さあ?ここ最近、出回ってると噂の新種の薬物かもねえ」

「えっ!?」

「「「「「!?」」」」」


太宰の発言に敦だけでなくまわりにいた警察官も驚く。

「ってことで、これも調べ給え」

太宰はハンカチごと警察官に渡した。

「死因が判るまで三時間弱といったところでしょうか」

「そうですね。我々は引き続き、証拠になりそうなものを捜査します」

「では私達は学生たちに聴き込みに行くとしよう。行くよ、敦君」

「あ、はい!」

死因が判り次第、連絡をするという約束をして太宰達はその部屋を去っていった。


建物を出てから敦は太宰の方をチラッと見た。


「あの……太宰さん」

「何だい?」

「最近出回ってると噂の薬って、確か『小さな赤い錠剤』じゃなかったですかね?」

「うふふ。流石は敦君、その通りだよ」

「何であんな嘘を」


事情聴衆の為か、
第一発見者の3人がパトカーに乗り込み、大学を出ていったのを見届けながら太宰は口を開いた。

「敦君が見付けた薬は『楽園』だ」

「えっ!?あれが『楽園』!?」

「そ。」

「何で教えてあげなかったんです?」

「これだけの『危険薬物』に関係しているだろう事件が多発しているんだ。彼等とて『楽園』の情報は持っている筈だろう?」

「!云われてみればそうですね」

「でも『楽園』だとは判らなかった。何故なら彼等が知っている楽園は通常、粉状……或いは注射器に入っている少し白く濁った液体状のものだ」

「!」

「云ったでしょ?『楽園』は表に出回らないって」


太宰のこの知識は前職
マフィアの頃に得ているモノだということだ。
あの場での知識披露は誤解や疑念を生む可能性が高い。


敦は「成る程」と小さく呟いて納得した。

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