第2章 双黒
朝だというのに静まり返っている倉庫街―――
車を止めて隣で眠っている紬に声を掛ける。
「紬着いたぞ」
「んー……じゃあ後、宜しく」
「……。」
判ってはいた。
紬はこういう人間だと。
然し、中也には怒れない理由があった。
『会社を倒産させる事』と『関係者の始末』と云う任務の8割を先刻、紬が片してしまったからだ。
チッ。
舌打ちしながら独りで車を降りていく中也。
紬の割り出した、潜伏先に向かって歩き出した。
「ったく、あの腹黒女。面倒な方だけ俺に回しやがって」
なんて悪態付くも、先刻、中也が紬と共に行動しなかった理由は『二日酔い』だ。
正直なとこら、未だ頭痛は治まっていない。
「……。」
しかし、中也が二日酔いなのも紬のせいだ。
独りであの会社に乗り込むために仕組まれていたのだろう。
そう気づいたのも、車の中で『あの呟き』を聴いたから―――。
「彼奴に会ったか」
頭に過るは『裏切り』の可能性―――。
「いや、無ェな。裏切る気ならとっくに青鯖のところに行ってんだろ」
帽子を被り直し、中也は目的の倉庫の前で立ち止まった。
ガシャァン!!
倉庫の出入り口であるシャッターを蹴りで破壊する。
破壊音が響き渡る程に静かな倉庫内に足を一歩、踏み入れた時だった。
ズダダダタ……!
「チッ」
バッと飛び退け、銃弾の飛んできた方向を確認する。
「2人か。やけに少ねェなっ………!」
ゴゥ!
向かおうとした瞬間に、今度は火の固まりが中也を襲う。
「あ゙あ!?」
ギリギリで交わした先にあるのは水溜まり……
嫌な予感がして直ぐに天井に向かって飛び退けた。
バチィッ!!
その勘は正しかった。
目に見える程の電気の帯が水を駆け抜けたのだ。
天井に『立って』確認すると、水溜まりに続く細い水の線………その先に人が立っていた。
「『異能者』の集まりって聞いてたが洒落になんねぇ程居やがるじゃねーか!」
トッ!と着地して、自分を感電させようとしたであろう人物に向かって行く中也。
ガシャァン!!
「っ!?」
今度は上から鉄材が降ってくる。
鉄が降ろうと槍が降ろうと中也にとっては同じだが、今回はそうはいかない。
帯電しているのだ。