第13章 協力
「折角、善いモノが出回ってるらしいって喜んだのにー………」
「判りきったことだろうが」
本当に落ち込んでるのかガクッと項垂れる紬。
「結構キツかったから『逝ける』と思ったんだけどなあー……『終焉想歌』は許しちゃくれないようだ」
「……。」
紬は解毒剤の箱を外套のポケットに入れる。
「期待外れだったから本当は中也に投げたいんだけど」
「……既に半分投げてンだろーが」
「うふふ。未だあまり気乗りしないようだねえ?」
「チッ」
寄り掛かっていた身体を起こして不貞腐れている中也を見ながらクスクスと笑う。
「にしても流石は『化学兵器』。下級構成員じゃあ手に負えないわけだ」
「解析班にまわす気は無ェのかよ、ソレ」
「無いよ、今はね」
「……。」
外套をチラッと視ながら云う中也の言葉に即答する紬。
中也は黙る。
既にこの『化学兵器』で身内に犠牲が出てる以上、紬の行動が正しいとは思えない。
しかし、反論はしなかった。
「中也も手出し無用だよ」
「……判ってるっつーの」
紬はその未知なる危険に向かって単身で動いている。
相棒である中也の身を案じて明日の予定を確認し、『手出し無用』とまで云い置いてーーー。
きっとソレが最善なのだろう、と。
中也は初めから『解毒剤』の存在など知らなかったことにした。
「却説、身内が3人も死んだら彼方さんは如何動くかなー」
そんな中也の考えとは全く別の事象の事を話しているかの様な。
例えるなら『明日の昼に何を食べようか』程度の軽い感じで紬は楽しそうに言葉を発したのだった。