第13章 協力
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「で?」
「ん?」
中也の執務室に戻り、ソファに座る2人。
そして直ぐに外套を脱ぎ、袖を捲り始めた紬を見ながら中也が話し掛ける。
「『失敗』だあ?冗談抜かせ」
「うふふ」
そして紬がポケットから取り出したモノをみて、中也が取り上げる。
「解毒剤か」
「中り」
空打ちしてから紬の腕に針を刺す。
中の液体を凡て注ぎ入れ終わると紬がコテンと中也にもたれ掛かった。
「未だ全部は見えないねえ」
「時間の問題だろ。現に俺達が捜してる薬よりも先に『解毒剤』の方を入手してきてンだから手前は」
「まあね……けど」
「……?」
残り2つになった注射器の箱を手に取って紬は呟くように言葉を吐き出す。
その表情は暗く、皺が寄っている。
「中也の明日の予定は?」
「あ?明日は傘下組織との会合と書類整理だな今のところは」
「そう」
「何だよ、急に」
紬の頭を撫でてやりながら、疑問だらけの発言に首を傾げる中也。
「即効性だけど2~3時間後にしか死ねない、なんて中々素敵な仕様だと思わないかい?流石、新種の化学兵器などと持て囃されるだけある」
中也はバッと時計を見る。
紬が出ていったのは19時前ーーー
そして、今の時刻は22時を過ぎたところだ。
「紬……手前ェ真逆」
撫でていた手を止めて、ガシッと紬の頭部を掴んで無理矢理に顔をむけさせる中也。
「珍しく真面目に仕事に行ったかと思いきや、なに服毒自殺図ってんだあ?!」
「いやー漸く死ねると思ったんだけどなー」
「阿呆抜かせ、この莫迦が!!」
「阿呆か莫迦か何方かにしてよ。流石に傷付くなあ」
「本っ当に手前ェは………っ」
はあ、と。盛大に溜め息を着く中也。
「最初から太宰と心中する心算でこの案件、引き受けたのかよ」
「中りー。でも所詮、この程度かと落ち込んでる」
「……そうかよ。様ァ無ェな」
ケッと悪態付きながら外方向く中也。