第13章 協力
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ポートマフィア本部ーーー
「ーーー以上です」
中也が読み上げた書類を机に置く。
「矢張り中也は優秀じゃのう」
「恐縮です」
上機嫌で褒める尾崎に頭を下げる。
「本当ですねぇ。貴方の相棒とやらとは大違いだ」
「……。」
しかし、次に聴こえた声に尾崎は顔をしかめた。
同じくして、中也も小さく反応する。
発したのは先日、金を積んでマフィア幹部の地位に就いた新参者ーーー「A」だ。
「時間を守らないおろか、こんな重大な会議にすら参加『出来ない』程に仕事の遅い不出来な幹部殿に私も早く挨拶したいのですが一体何時になれば叶うのやら」
挑発にしか聴こえない台詞に中也が口を開きかけた
ーーーその時だった。
「それはそれは。大変申し訳無いことをしてましたねえ」
「「「!?」」」
音もなく。
いつの間にか入室していた「仕事の遅い」幹部はうふふと笑いながら答えた。
「おや、紬君。珍しいねえ」
「いやー中也の電話だけなら無視しようと思いましたが、中也の優秀な秘書からの連絡とあればそう無下にも出来なくて」
「手前ェっ!」
「ふふっ。早速、仕事を熟しているようだねえ山吹君は」
「中也のスケジュールを完璧に把握して、それが恙無く執り行われるように管理しているようですね。嗚呼、矢っ張り中也の秘書にしておくのは惜しいなあ」
そう云いながら紬は中也の隣の席に腰掛けた。
「どうも、『会議に参加出来ない程に仕事の遅い不出来な幹部』です」
そして、ペコッと頭を下げながら紬は正面に座っているAに云った。
Aはチッと舌打ちして目を反らす。
その様子を一瞥してから中也は紬に話し掛けた。
「如何だったんだよ」
「それがねえ。失敗してしまったのだよ」
「……。」
やれやれ、と。
息を吐いて答える紬に中也が黙った。
それとは打って変わってAは『失敗』と云う単語を聴いたと同時にニヤリと笑った。
「おや、遅いだけでなく失敗とは。不出来な幹部と少々云い過ぎたかと思えば強ち間違いでは無いようですねえ?」
「いやはや返す言葉もありませんよ」
うふふと笑いながら返事をする紬を見下すように笑い飛ばすA。