第13章 協力
「ははっ………流石………マフィアってこんなに凄いのか」
ユラッと立ち上がって紬に少し近付く。
試験管を取りに行った男だった。
3本の内、1本を震えている仲間に渡して歩き出した。
「凄い?」
「ああ……目眩ましの為に何重にも役割分担して……そして、棲む世界が違う筈なのに………突き止めるんだから……」
そのまま、会話をしながら紬を通り過ぎ、先程その試験管を取りに行った別室と紬の中間ほどの位置で立ち止まった。
「それは違うよ」
「……何?」
紬は溜め息を着く。
「私達の棲む世界と君達の棲んでいる世界は常に背中合わせだ。故に、調べられない事など存在しない。まあ、君達よりも眼を光らせてはいるかもしれないけど」
「そうか『今後』の参考にさせてもらう」
今後………。
紬はこの言葉で、男達が何かしらの行動に出ることを悟った。
ーーーその瞬間だった。
「死ねぇーーーっ!」
「!」
男達が紬に向かって。
正確には「紬の足元」付近に持っていた試験管を叩き付けた。
パリンッ
男達の思惑通り、3本の試験管は綺麗に割れる。
その音を聴いたと同時に1人は別室へ向かい、もう2人は服を胸元から引っ張り、鼻と口を覆い俯く。
「ふーん。矢張り、気体か。無臭のようだね」
紬は詰まらなそうにそう呟くと、先に俯いている2人の男の方へと向かった。
「たったあれだけの量に過剰に反応しすぎなんじゃない?」
そう声を掛ける。
が、男達は既に苦しんでいる様子だった。
「へえ……」
紬はフッと笑うと男達に触れて。
もう1人の男がいる別室へと向かった。
別室は色々な薬品や資料が積まれた部屋だった。
男はそれらの棚を必死に開けて、何かを捜しているようだ。
男も既に足取りが可笑しく、呻きながら動いている。
ーーー紬に気付く余裕すらないようだ。
「!」
男は何かを引っ張り出した。
目的のモノを見付けられたらしい。
長方形の箱に収まっていたソレを取り出して、自身に射した。