第13章 協力
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時折、手にある機械を見ながらその画面が光の点で示す場所へと紬は来ていた。
「成る程。◯◯公園前の大通りの先が大学の裏手ーーー『若者』達の集まる場所とはねえ。この発想は無かったよ」
独り呟きながら塀をひょいと登る。
何時もは肩に掛けているだけの外套をきちんと羽織り、紬は躊躇わずに歩き出した。
時刻は午後8時前ーーー
人気が全く無いとまではいかないが、そう多いわけでも無さそうだ。
人目を避けるようにして歩く紬の前に現れたのは、周りの建物に比べてやや古びている建物。
その入り口には『理学部 科学科B』と掲げられていた。
「此処か」
持っていた機械を仕舞って建物を仰ぎ見る。
入り口から見える窓から光の差す箇所は全く無く、元より古びているせいか外よりも真っ暗であった。
紬は小さく息を吐いた。
元々、手袋をしているため何の躊躇いもなく扉に手を掛ける。
ガシャッ
力を余り入れずに引いたものの、扉は抵抗して開かなかった。
「やれやれ。『一寸の用事』と云う訳では無さそうだね」
何処に仕込んでいたのだろうか。
袖口から素早くヘアピンを取り出して鍵穴に挿す。
数回カチャカチャと操作したところで鍵穴は「カチャン」と音を立てた。
キィ…
古びているせいで軋む扉をそろりと開けて紬は中へと入っていった。
「結構、広いねえ」
キョロキョロと辺りを窺って、紬は取り敢えず歩き出す。
「!」
1階を一通り見終わって階段を上がったところで何かに気付いた。
「………ったな」
「ああ……………と思っ………」
「………いとこ………を……って行こ………」
話し声だ。
紬は声のする方へ、音を立てずに進んでいった。
夜が支配する黒世界にいるせいか、暗闇でも充分にその声の主達の姿を捉えることが出来る紬は、ライターの灯りと思われる小さな明かりを頼りに歩いている人物達のかなり傍まで迫っていた。
声から男だろうと思われる「3人」は紬に全く気付くことなく話し続けている。