第13章 協力
電話を仕舞ってから紬は中也に話し掛ける。
「治が云うこと聞いてくれない」
「様ァねーな」
「……。」
中也の返しにムッとしながら、その手にある報告書を奪う。
「で、何で中也まで不機嫌なの」
「あ?俺は別に不機嫌じゃねーよ。寧ろ、手前の思い通りに事が運んでない状況に愉快な気分だ」
「先刻、睨み付けた上に舌打ちまでしてたじゃないか」
「あ?ああ……アレか」
不機嫌ではないと紬の意見を否定したものの思い当たる節は在るらしい。
「此処でヤるのが厭な理由とやらなんだろう?治も昔、此処じゃ厭だって云ってたけど」
「彼奴は理由教えてくれなかったのかよ」
「うん。と云うより訊いたことが無い」
「ふーん」
「で?何で」
「……。」
中也はクシャと紬の頭を撫でた。
「ヤッた直後は誰にでも女の顔すンだよ、お前」
「はあ?」
紬は怪訝な顔をする。
けれど中也の手を払ったりはしなかった。
「中也、私のこと男だと思ってたのかい?」
「んな訳あるか」
「答えが全く納得いかないものなんだけど」
「そーかよ。じゃあ手前の愛しの兄貴にでも聞け」
「……。」
紬は書類を捲り始める。
「不機嫌になるんじゃねーよ。芥川も動いてる。今から紬も動きゃ善い話だろーが」
「…暫く会えないって云われたもん」
「ホント面倒臭ェな手前ェら兄妹は」
中也が盛大に溜め息を着いた。
紬はある頁で手を止めて熟読し始めた。
今朝の新聞で確認した事件の犯人をはじめ、公に取り上げられていないだけの、類似の事件の詳細及びソレに関わる人間達の個人情報が凡て載っていた。
「………『若者』の間で、か」
「何か判ったのかよ」
「コレ……」
と、気にした箇所を指で示した瞬間に叩敲が鳴った。
「入り給え」
「失礼します」
入室してきたのは芥川だった。
「お帰り。如何だった?」
「指示された場所の内、1ヶ所」
「!」
そう報告しながら小さい袋を紬に渡す。
ジッパー付きの袋に入っていたのは
『小さな赤い錠剤』だった。