第13章 協力
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あれだけ早く帰ってくるように云ったのに。
そして、間違いでなければ『中也の部屋』に来るようにと伝えた筈なのだが。
「……今、何時か判るか?」
「ん?午後4時を回ったところだねえ。なに、中也。時計も読めなくなったのかい?」
「……俺のトコ来いって云わなかったか?」
「云ってたよ?そして、云い付け通りにちゃんと顔だしたけど居なかったのは中也だもん」
「…態と居ないタイミングで顔だしただろ手前!」
米神に筋を浮かべながら中也が云う。
実のところ、その通りだった。
中也が部屋を空けた隙に戻ってきたらしい紬は、自室のソファに横になった状態で何かの書類を読んでいた。
然し、こんな状況でも中也が紬に口で勝てるわけがない。
中也は長めに吐き出した息に怒りを乗せた。
「……で。気が済んだかよ」
「うーん。イマイチ」
「チッ」
太宰が居なくなってから、この4年間。
紬は随分と大人しかった。
勿論、自分に害が及べば例外なく倍にして返しはしていたものの、それ以外は目立たない程の行動しかしていなかった。
故に、樋口は太宰の事を周知していなかったのだ。
『太宰幹部』とは聞いていたかも知れないが、
どの様な外見で、どの様な性格なのか。
総じて如何様な人物なのか。
一切、不明だったのだろう。
これ程までに成りを潜めていた……
つい昨日までの紬が嘘だったかのように紬は嬉々として嫌がらせに勤しんでいるのだ。
「中也への嫌がらせは未だ終わってないよ」
「『荷物』の押し付けに、弁当じゃあ不足だっつーのかよ」
「あら、気付いていたの?」
「当たり前だろーが」
読んでいた書類を置いて、中也の方を見る。
「中也」
「あ?」
「大切に扱い給え、確りとね」
「チッ、糞ッ…!」
バッ。
中也は紬の上にまたがった。