第13章 協力
「手掛かり…在りませんでしたね」
「まあ、簡単に判るくらいなら警察だってとっくに見付けている筈さ」
「そうですよね」
はあ、と息を吐いて敦は空を見上げる。
そろそろ日も傾き始めたのか、空は赤みを帯び始めていた。
「一旦、社に戻ろう」
「はい」
太宰の一言で、2人は探偵社へと戻ったのだった。
社へ戻り、本日の成果を報告する。
「矢張り、そう簡単にはいかないか。明日も引き続き調査してくれ」
「はい」
内容が内容だけに、国木田も特に何も云うことなく報告を聞き届け、自分の仕事に戻った。
報告書を作成すべく、行動を共にしていた太宰の席を見る敦。
しかし、其処に太宰は居なかった。
けれど、まだ荷物はある。
ーーー最愛の人から作ってもらったと云っていた弁当箱が机の上に置かれたままなのだ。
敦はキョロキョロと首を動かす。
そして、目的の姿を捉えた。
太宰は丁度、探偵社の入り口扉のドアノブに手を掛けたところだった。
「あれ?太宰さん、どちらに行かれるんです?」
「一寸、電話にね」
此方を向かず、ヒラリと手を振ってそう答えると太宰は事務所から出ていった。
「電話なんて珍しいですね。彼女さんかな?」
「……羨ましくなどないぞ」
敦の呟きに、国木田は手を動かしながら答えたのだった。