〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第77章 桃色戯画-戯れに溺れる蜜ー❀織田信長❀
「おや、随分と嬉しそうですね」
「たわけた事を…こちらの包みはなんだ」
意地悪く瞳を細める光秀に一瞥し、反物の山の横に置かれた、大きな四角い包みに手を伸ばす。
布に包まれているそれに手を掛け、多少乱暴に包みを開いた。
「え……?」
開いて中を確認した途端。
俺は『それ』に驚き、目を見開いた。
中から姿を現したのは、一枚の絵だった。
ただ、それは普通の絵とは違い…
何とも艶めかしく、妖しい絵。
俗に言う『春画』というものだろう。
春画とは、特に性風俗…異性間・同性間の性交場面を描いた絵画の事だ。
しかしここにある春画は、性行為場面の絵ではなく、女が一人だけ描かれていた。
その女は着物を乱し、こちらに向けて脚を広げ…
その脚の中心、蕩けた蜜部に自分の指を咥えさせている。
肌を赤く染め、快感に歪む表情。
顔の作りは幼そうなのに、女の色香を放ちながら自慰にふける、その女はまるで……
(美依……?)
「この娘…どことなく美依に似ているような」
すると、光秀が絵を覗き込み、俺の心の声を読んだかのように言葉を発した。
俺は内心少し動揺したが、それを悟られないように、敢えて感情のないような声色で話す。
「確かに似てはいるが、本人ではない。似ている女でも模範にして描いたのだろう」
「そうでしょうね、実際に美依がこのような顔をしている所を見たことが無いですし」
「当たり前だ。俺ですら美依の自慰している姿など見たことは無い」
「なら…想像が膨らみますね」
「たわけが、もう下がれ…光秀」
光秀はくっくっと妖しげに笑いながら、そのまま天主を出て行った。
全く、俺を愚弄しているのか。
『想像が膨らみますね』など…
この俺が、春画を見ながら美依を想像するなどあり得ない。
そう、いくら美依に飢えていても…
「…飢えているとはなんだ、馬鹿馬鹿しい」
俺は自分の考えを否定し、再度その絵に布を掛けた。
美依がこれを見ぬ間に倉庫にでも運ぶか。
変な疑いをかけられても、面倒だし…
そんな事を思いながらも、俺はそれを天主の隅に運び、そのまま公務に戻ったのだった。