〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第77章 桃色戯画-戯れに溺れる蜜ー❀織田信長❀
「んっ…ぁっ、はぁっ……!」
謹賀新年、
謹んで新年の喜びを。
早春の香りが漂い始め、梅の花も芽吹く頃。
天主の空気は、桃色に染まる。
己を慰める為に、
欲望の証を、自らの手で愛でて。
その時思い描くは、愛しき存在。
淫らに乱れる様を思い出し、
それに煽られ、さらに熱を持つ。
「はぁ…美依、んぁぁっ……」
────俺を満足させろ、美依
貴様の愛らしい姿で、声で、肌で
全ての始まりは、一枚の絵画。
まさか、魔王と呼ばれるこの俺が、
それにみっともなく欲情するとは……
*****
「先日傘下に入った大名からの献上品です」
新年が開け、二日ほど経った初春の日。
天主にはその日も沢山の献上の品が運ばれ、俺はそれを見て小さく息をついた。
傘下にいる大名の中には、俺に媚びを売ろうとする連中も少なくない。
いくら媚びを売られようが、今は乱世。
実力が無ければ、のさばる事すら出来ぬのだが。
(まぁ上にゴマすりをする事も、確かに賢いやり方だとは思うがな)
現に傘下に入ったばかりなら、気に入られたいと思うのも不思議ではない。
その気持ちは買ってやろうと…
俺は光秀が運んできた、その献上の品々を目利きするように手に取った。
「随分と華麗な反物だな」
「その土地は織物産業が活発でして、それで国も潤っているようなもの。美依あたりが見たら喜びそうですね」
「確かに。家康と美依から連絡は?」
「今朝家康から文が届きまして、無事に帰途についたと。夜半には安土に到着出来るようですよ」
「……そうか」
今、美依は安土に居ない。
視察に行った家康に『織田家ゆかりの姫』として同行しろ、と命じたからだ。
安土を離れ、もう十日ほど。
美依の『かれし』となってから、これほど長く離れていた事も無かった。
確かに少し物足りないと思いつつも、天下布武の為にはそうせねばならぬ時もある。
それは割り切っているつもりでも、ようやく俺の手の中に帰って来るのだと…
それを思うと、少しばかり頰が緩んだ。