〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第76章 純華溺愛恋情論《後編》❀明智光秀❀
「もうすぐ年の瀬だな」
「その前にクリスマスですよ、光秀さん」
「くりすます?」
「はいっ」
そう言って、美依はにこにこと説明しだした。
南蛮の神が生まれた日を祝う、その『くりすます』とやらは、恋仲同士でも祝い事として、逢瀬を楽しんだり、贈り物を贈り合ったりするのだそうだ。
まぁ、それは美依の居た世での話だが。
それでも、こうして話題に出すと言う事は…
一緒に祝いたいと、そう思っていると言う事だろう。
「……一緒に過ごすか、くりすますとやらを」
「本当ですか?」
「ああ、逢瀬でもするか」
「はいっ、約束ですよ!」
(約束だけで、こんなに嬉しそうにして……)
一緒に居ることを、本当に喜んでくれる美依が、愛しくて愛しくて堪らない。
影を歩く俺が手にした、唯一の光。
それは変わらずに眩しく、真っ白で……
俺色に染めたはずなのに、ちっとも穢されてなどいないのだと、意味しているようだ。
だが……それでいい。
お前はいつまでも、白く可憐でいてくれ。
「なら、温泉でも行くか、美依」
「え……本当に?」
「俺の国に、丁度いい場所がある。くりすますはそこへ行くか?」
「クリスマスに温泉なんて素敵です!」
「なら、説得だな。秀吉に信長様に政宗に……」
「うっ…そうですね……」
これは、美依と想い合ってから解った事。
美依を自分の物にすると言うのは、どれだけ大変か…
美依は自分の所有物とする信長様。
妹溺愛、ベタッ可愛がりの秀吉。
煽ったくせに、未だちょっかい出す政宗。
まぁ、敵は多い方が倒し甲斐はあるが。
────今は、とりあえず
この温もりを、また堪能させてくれ
「美依、傘を持ってくれ」
「はい、いいですよ」
美依に傘を持たせると。
俺はそのままふわりと美依を抱き上げる。
美依が小さく声を上げてびっくりしたが。
傘を持っていたら、お前を抱けないだろう?
そのままゆっくり歩いて御殿に向かって。
今宵もまた、熱く濡れた一夜にならんことを。