〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第76章 純華溺愛恋情論《後編》❀明智光秀❀
「俺が来なければ、政宗にこうされていてもおかしくはなかった。政宗は俺に、美依を貰うと…そう宣言したからな」
「あ…さっき政宗が言っていた事ですか?」
「そうだ」
「……光秀さんは好きにしろって言ったんですよね?なら…なんでこうして、来てくれたんですか……?」
無自覚に聡いのか、ただ考えナシなだけか。
その潤んだ瞳は、何かを期待しているようで。
期待しているのは、俺の言葉か。
その先を…欲していると捉えてもよいのか。
女には慣れているはずのこの俺が、こうして迷うなんて……
この先を求めるか、否かを。
何故…こんなに戸惑うのだろう。
「お前を何者の色にも染めたくないからだ」
俺は、顎に当てた手を離し、指の背で美依の頬を優しく撫でた。
少しも荒れていない、滑らかな肌。
白銀の大地に咲く、花のようなお前は……
鮮やかに俺の心を染めて、可憐に咲き誇る。
「お前が政宗に染まるなど、そのような事は許し難かった。お前は…俺が見守ってきたのに」
「光秀さ……」
「お前に俺は嘘はつけん。曝け出すと腹をくくったからには…俺はお前に正直になるだけだ、美依」
「……っっ」
「……ずっと、想っていたよ」
────純ナ華ヲ、溺愛スル恋情
諭スナラ、俺ノ心カ、オ前ノ心カ
「お前だけを、この心に。一人の女として…愛しているよ、美依」
「み、つ、ひ、で、さ……」
美依が途切れ途切れに名を呼ぶ。
その唇を塞ぎたくても。
何か歯止めが掛かったように、動けなかった。
────赤裸々な気持ち
暴いてしまえば、簡単な事だ
『素直になれ、光秀』
政宗が張った罠
まんまとはまった俺
見守るだけの俺が……
一歩踏み出し、晒した心
お前は、受け止めるのか?
そんな無垢な瞳で
疑う事も知らないお前は
期待しているのか
ただ無自覚なだけか
その瞳に、何を映しているのか
考えが読めないのも、珍しい
でも──……
(……お前は守ってやらねばな)
『その先』を求める事に戸惑いがあるのは…
お前を傷つけるのが、怖いからだ。
お前は俺にすら、傷ついてほしくないから。