〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第76章 純華溺愛恋情論《後編》❀明智光秀❀
「……美依」
「は、はい……」
「隣に座ってもいいか」
「どうぞ……」
俺は美依の了承を得てから、目を開けると、美依の隣に静かに腰を降ろした。
そのまま美依を見てみれば……
ほのかに頬を染め、俺を犬っころのような瞳で見ている。
まずは何から話そうか。
そう考えて、とりあえず政宗と美依がここに来た経緯を問いただす事にした。
「お前、政宗に誘われて、ここへ来たのだろう?」
「あ、はい……」
「なんと言って誘われたんだ。ここがどのような店か知っていて来たのか?」
「私はただ…政宗について来いと言われただけです。光秀が来るぞって政宗が言うので…理由も知らないまま待ってました。このお店、何かあるんですか…?」
(……やはり、何も知らずに来たのか)
親しい男だからって、ついて来いと言われて、こんな場所にまで簡単について来るとは……
人を信じすぎるにも程がある。
この状況では、何をされてもおかしくないだろう?
「なら、教えてやる。この店はな……」
俺は、隣で見つめてくる美依の肩に手を置くと、その手に力を入れ、畳へと美依の身体を押し倒した。
そして、美依の上半身に覆い被さる。
顔の横に手をついて閉じ込めれば……
美依は真っ赤な顔をして、俺を見上げてきた。
「このような事をする店だ。お前も女なら、この先がどうなるか…予想くらいつくだろう?」
「み、みみみ、光秀さ……」
「どうした、身体に解らせなければ、理解出来ないのか?」
「わ、解ります、けどっ……!」
そう言って、美依は視線を逸らす。
……駄目だ、俺を見ろ、美依。
そう思い、顎に指を掛け、再度上を向かせた。
潤んだ瞳、兎のように赤くして。
その純な眼差しが、俺の歯車を狂わせた。
影をひっそり歩く俺が。
何も望まず、無欲に御役目に励んできた、この俺が……
『────欲しい』と
たった一つ、望んだこと。
政宗の色にお前が染まると、察した時に走った激情。
それは、何にも変えられない苦痛だった。
清らかな純な華は──……
この手で愛でたいと、
それを望んでしまったから。