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〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀

第75章 純華溺愛恋情論《前編》❀明智光秀❀




「……おい」

「はい?」

「きな粉がついているぞ」

「え……あっ」




俺は無遠慮に口の端を親指で拭う。
口にきな粉をつけるとは子供だな、全く。

拭った手を退けると、美依はぽっと頬を薔薇色に染め、小さく俯いた。



(これくらいで照れるとは、可愛らしい娘だ)



そう思って、一回ぽんと頭を撫でてやる。
すると、美依は気まずそうに視線を泳がせ…
やがて、ぽつりと何かを呟いた。




「やっぱり、小娘なのかなぁ……」

「ん?何か言ったか」

「い、いえ、なんでもないです!今日は誘ってくださって、ありがとうございます」

「いや…また来るか、一緒に」

「……っ、はいっ」




また愛らしく笑った美依に、俺はまた無意識に優しい笑みを返す。

もうじき雪も降るような季節なのに。
俺の心は温まって、まるで陽だまりの中に居るようだった。















照れたり喜んだり、ころころ変わる表情。
そんな美依は、いつも作り笑いを作っている自分と違って……

純粋で、真っ直ぐで、真っ白な光に見える。
それは眩しく、汚してはいけない気がして。
俺は……一歩離れて見守るのが精一杯だ。



────この気持ちに名前などは無い



ただ……今はまだ、そうなだけであって。
名前を付ける気になれば、すぐ付くけれど。
でも……名前を付けてしまえば、引き返せなくなると解るから。

想う気持ち、これは報われなくていいのだ。
俺と居れば、暗い裏の道に美依を引き込むことになる。

それは、決してあってはならない。
お前は、明るい陽の当たる場所が似合う。



綺麗に笑うお前だから──……
俺に染まってはいけないよ、美依



見守るだけの、不毛な想い。
それは白黒付けずに、そのままで良いと思っていた。

が、ひょんな所で転機はあるもので。
特に、こう愛らしい娘なら、俺以外の男も惹き付けるという事実。

それを、俺は軽視しすぎていたのかもしれない。














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