〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第75章 純華溺愛恋情論《前編》❀明智光秀❀
────お前は、俺と真逆の光だ
例えば、陽と陰
例えば、太陽と月
明るい場所で光を浴びるお前と
薄暗い、影の道を行く俺
それは、決して交わらない
どんなに想っても、交わってはいけないと
お前が翳ることは、俺が許さないから
だから、見ているだけでいい
お前の笑顔が見られれば良かったのに……
浅ましくも、
熱情という物は制御が効かなくなる
自分を偽ることは、得意だったこの俺が
こんなにも、お前に溺れるとはな──……?
「わぁ…このわらび餅おいしいですね!そんなに甘くないし……」
「口に合うようで何よりだ。まぁゆっくり食え、急ぐことは無いならな」
俺の目の前で、美依が無邪気にわらび餅を食う。
俺はその愛らしい表情を見つめ…
茶を啜りながら、思わず口元を緩めた。
この俺が、こうして甘味屋に居ると言うのは、だいぶおかしいと言うか、意外だと思われると思う。
もちろん、俺が食ったところで味など解らない。
じゃあ、何故こうして居るのかと言うと…
(美依が好きそうだと思ったからな)
最近出来たばかりのこの店は、どうやら女の心を掴む甘味が揃っていると評判だ。
特に、この黒蜜がけのわらび餅。
これは一番の人気だと誰かが言っていた。
なら…普段世話役の仕事をよく頑張っている美依に、食わせてやりたいと。
単純に思ったから、連れてきただけで。
深い意味は……ない、筈だ。
「光秀さんも食べればいいのに」
「俺に味など解ると思うか?」
「でも、一口…はい、どうぞ」
すると、美依は黒文字でわらび餅を挿し、俺の口元にそれを差し出した。
……この状態で食えと言うのか、小娘。
かなり恥ずかしいと思いつつ、口を開けて、そのわらび餅を口に含む。
とろりとまろやかな食感が口に広がり…
少し噛んだだけで、それは口から無くなって、喉を通って行った。
「……歯ごたえがないな」
「え、感想それだけですか?」
「他に何を言うことがある」
率直な感想を述べれば、美依は若干しゅんと肩を落として、またわらび餅を食い始める。
がっかりされてもな…と思いつつ。
俺はある事に気が付き、美依にすっと手を伸ばした。