〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第74章 望月の恋人《後編》❀徳川家康❀
「俺はあの夜…本当にあんたに悪い事をしたと思ってる」
「家康……」
「あんたの気持ち考えずに、俺の考えを押し付けた。あんな事しても、あんたが納得する筈ないのに……でも、俺も苦しかった。痛くて痛くて、死にそうだった」
「……うん、そんなの解ってたよ」
美依が優しく俺の頬に手を当てる。
小さな手から温もりが移って……
それこそ、泣きそうになってしまう。
「家康はね、自分でひねくれ者って言うけど…そうじゃないよ」
「え……?」
「目はいつも本当の事を言ってるから。あの日の家康、瞳が苦しそうだった。酷いことを言っても…瞳はごめんって言ってた」
(美依……)
どうやら、この子は俺の心を見透す力があるらしい。
きっとそれは、ずっと間近で俺を見ていたから……
この子は、全て感じ取ってくれるんだ。
苦しみも、痛みも何もかも……
そんな、感受性が豊かなあんたには。
喜びや幸せだけを知って欲しい、そう思う。
「だからね、あんたに今……誓わせて」
俺は美依の身体から離れると、すっと美依の前に跪いた。
そして美依の手を取り、白い手袋を外す。
そこから現れた、白く小さな手の甲に……
俺は優しく唇を押し当てた。
「……っ、いえや……!」
「美依…俺はこの先も、戦い続けるだろう。でも、俺にはあんたが必要だ。力も手に入れる。あんたのことも、ずっと離さない。その二つがあって初めて、俺は生きてるって実感できるから」
「……っ」
「だから、あんたを一生守り抜くよ。何があっても、その笑顔を絶やさずにいられるように」
野原のに、穏やかな風が抜ける。
それは優しく頬を撫で──……
俺のひねくれた心を、素直にさせようと囁きかける。
「あんたと俺の生涯が終わるまで、ずっと…俺はあんたの傍にいるよ、美依。だから、一生愛され続ける覚悟を決めて。愛してる、あんただけを……ずっとずっと愛してるよ」
「い、えやっ……」
下から見上げれば、美依は泣きべそをかいて、顔をくしゃっと歪ませた。
あーあ、せっかく綺麗なのに台無し。
俺の言葉で泣かせてしまったなら……
今度は、目いっぱい笑って欲しいな。