〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第74章 望月の恋人《後編》❀徳川家康❀
「ごめん…私、帰れなかった」
「うん」
「家康に生きて欲しくて、どうしても…一緒に生きたくて」
「人の言う事聞かずに…本当にどこまで無茶苦茶なの。でも……」
「ひゃっ……」
美依の腰を掴んでふわりと抱き上げ……
今度こそ、心の本音を言う。
もう、泣き笑いで意味わかんないけど。
────でも、幸せだ
「ごめん、美依。でも、ありがとう…一緒に生きよう。あんたが生きていてくれて、良かった」
望月が冴え冴えと浮かんでいた、あの夜。
あの蜜月は俺達を見て、何を思っていたのだろう。
天邪鬼な俺と。
素直すぎる、この子は。
きっと足して二で割ったら丁度いい。
そんな俺達だから、見れる世界もある。
とりあえず今は、この子に花嫁衣裳を着せてあげよう。
きっと、世界一綺麗だから。
純白を纏った、俺だけの女の子は、
────何よりも強い、美しい天使だから
*****
「家康〜、美依〜〜?あいつら、どこに行ったんだ、全く」
それから、二月後の満月の夜。
紋付袴姿の秀吉は、家康と美依の姿を探し、安土城中を歩き回っていた。
今日は家康と美依の祝言の日。
今は式も終わり、城の広間で盛大な祝宴が執り行われていた。
……が、気がつけば主役の二人が居ない。
それに気づいた秀吉が、皆に知られないように探しに行ったのだが……
結局二人の姿を見ることはなく、再度広間に戻ってきた。
「居たのか、家康と美依は」
「いや…結局探せなかった。主役の二人がいないのは、まずいだろ」
広間の外の廊下で一人酒を煽る光秀が、秀吉に声を掛ける。
秀吉は、大きく溜め息をついたが……
それに反し、光秀はさも可笑しそうに口角を上げた。
「まぁ、皆勝手に食って飲んでるから平気だろう。少しの間くらいなら、主役が居なくてもな」
「まぁ…確かにそれはな」
「それに見てみろ…秀吉。落ちてきそうな美しい満月だからな、あれをもっとよく見たいと足を伸ばす事もあるだろう」
光秀に言われ、空を見上げれば……
濃紺の夜空に、鮮やかに輝く、丸い望月が浮かんでいた。