〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第73章 望月の恋人《前編》❀徳川家康❀
『何があっても守る』
そう言ってくれたのは、ほんの少し前。
あの時とは別人だ。
何故、何故こんなことを言うのだろう。
私は引きずられるのに抵抗しながら、なんとか理由を聞き出そうと家康を必死に見つめた。
「嫌、行かないよ…!だって家康、さっきは何があっても守るって……」
「気が変わった」
「嘘だよ、なんか事情が……!」
「……」
そう言った時、冷ややかな表情が、ほんの少しだけ痛々しく歪んだ。
それを見て、ある事に気がつく。
さっき佐助君は、家康に会いに行ったんだ。
それが意味すること、それはつまり──……
「家康、もしかして佐助君に聞いたの?!私が元の時代に帰れるって話……!」
「……」
「だから、私を助けようとしてこんな事するんでしょ……違う?!」
すると、家康はピタリと動きを止めた。
そして、小さく俯く。
それは、私が言った事を、肯定するかのように。
────が、次の瞬間
「だったら……何」
ドンッ……!
家康は私の腕を離し、今度は肩を掴んで、近くの壁に私を押し付けた。
そして反対の手を、私の顔の横で付く。
私を壁に閉じ込め、家康は……
何だか痛そうに、小さく笑った。
「あんた、相当な自惚れ屋だね」
「家康……」
「そんなに、俺の事すきなの?離れ難い?」
「……っ」
「なら、こうしてあげる」
家康は、私の耳元に唇を寄せ……
掠れた甘い声で、誘うように呟いた。
「最後の思い出あげるから……俺の前から消えて」
「きゃっ……」
家康が私を抱き上げたのは、その直後だった。
私を横抱きにし、さっき出た天守に舞い戻る。
その隅で私は降ろされ……
家康が、瞬時に覆いかぶさってきた。
さっきは、感情がない硝子玉のようだった瞳は…
今は爛々と輝き、妖しい熱を灯していた。
「いえ、や……」
「しばらく抱いてなかったし、丁度いいね。思い出になるように…目いっぱい抱いてあげるよ」
「ちょっ…家康……?!」
「それなら文句ないでしょ?その思い出を持って、心置き無く現代に帰って」
家康の手が襟にかかる。
乱暴に開かれ、胸が零れ落ち…
家康が舌舐めずりをしたのが見えた。