〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第73章 望月の恋人《前編》❀徳川家康❀
「私のためを思って言ってくれてるのは解ってる。佐助君が、どんな時でも私の味方になってくれていることも」
「美依さん……」
「でも、帰れない。帰れるわけがない。私は家康にも生きて欲しい。独り残していけない……あの人を愛しているから」
もう、家康からは離れられないから。
あの人のお嫁さんになって、可愛い子供を産んで……
幼い頃、幸せを築けなかったあの人と、幸せな未来が見たい。
それが、私の夢で希望だからだ。
「……そうか、解った」
すると、佐助君はするりと私の肩から手を離した。
ごめんね、佐助君。
心配してくれているのに、聞けなくてごめん。
そう思って、必死に顔を見上げる。
すると、佐助君は小さく息をついて……
口角を少し上げて笑った。
「少し家康さんと話してくるよ。俺でも見張りくらいにはなるだろうから」
「なら、私も一緒に行く。家康に話があって……」
「美依さんはちょっとここで待ってて。家康さんと、少し男同士の話をしたいんだ」
「……?うん、解った」
佐助君は、そのまま颯爽と天守を出ていった。
私はワームホールのことなど忘れて、さっき思いついた事を家康にどう話そうかと。
そればかりを必死に考えていた。
でも──……
何故、あの時無理やりにでも佐助君と一緒に、家康に会いに行かなかったのだろう。
佐助君はいつも言っていた。
『何があっても、最後には美依さんの味方をする』と。
それがどう言う意味なのか……
もっと深く考えれば良かったのに。
*****
「────美依」
しばらくして、天守の襖を開け、家康が入ってきた。
佐助君とは話は出来ただろうか。
そう思い、小走りで家康に近づく。
「家康、佐助君に会えた?」
「うん」
「あのね、私も家康に話があって……」
「……」
(家康……?)
そっぽを向いた家康を不思議に思い、私は言葉を詰まらせた。
なんだろう、なんか様子がおかしい。
まるで、光の入っていない緑の硝子玉。
迷い子のような瞳をしている気がして……
私は不安になり、家康の顔を覗き込みながら、言葉を口にした。