〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第73章 望月の恋人《前編》❀徳川家康❀
「私が、助かる方法……?」
「ああ、君にとっては、きっと望まない方法だけど」
「……どういう事……?」
私は固唾を飲んで、佐助君の次の言葉を待つ。
すると、佐助君は、ものすごく言いにくそうに……
でも、淡々とその方法を話し始めた。
「この前、話したよね。ワームホール出現のこと」
「うん…出現場所が京からだんだんズレてるって説明してくれたよね」
まだ戦に出る前の事。
私の部屋を訪れた佐助君が、話してくれたことだった。
私達を現代に戻すためのワームホールが、本来なら京に現れる筈なのに、だんだんとそれがズレてきていること。
私はその話を聞いて……
もう現代へ帰るつもりはないと、佐助君に話した。
家康と生きていく、それは私が決めた事だから。
だから、どこにワームホールが出ても関係ないと思っていたのだけど……
「そのワームホールの出現場所は、まるで俺達を迎えに来ているように、だんだん座標が変わっていったんだ」
「そうなの……?!」
「ああ、俺の計算だと、この城の中に……今日の夜明け、ワームホールが出現する」
(嘘っ……)
それを聞き、背筋に冷や汗が流れた。
私達を迎えに来ているようにって……
まさか強制的に、ワームホールに巻き込まれてしまうの?
だが──……
そこまで聞いて、私は思い当たってしまった。
佐助君がさっき言った『私が助かる方法』
それは、つまり──……
「佐助君、私が助かる方法って、まさか……」
「……元の時代に帰る。そうすれば、君は助かる」
「……っ」
「俺は謙信様が心配だから残るよ、家康さんと相談して…なんとか状況を突破出来ないかやってみる」
淡々と説明する佐助君とは裏腹……
私の心には行き場のない激情が渦巻いていた。
帰れない、帰れるわけがない。
だって、私は……
『美依、あんたをお嫁さんにする事に決めたから』
「嫌……」
「美依さん?」
「嫌、絶対に帰らない!私は家康の傍で生きていくと決めたの……!」
戦いの役には立たないし、足手纏いになる。
そして死ぬのは、怖い。
でも、こんな方法で一人だけ助かったら、死ぬより辛い。
私の命は……あの人と共にあるのだから。