〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第72章 君しか見えない-繋-❀伊達政宗❀
「私はっ…政宗の、一体何………?!」
(……っ!)
見上げてくる、零れんばかりの瞳は。
心底傷ついたように、曇っていた。
震える小さな拳で、何度も何度も何度も。
俺の胸を叩き、それは弱々しくて。
儚い結晶のように、消える一歩手前。
「興味本位で傍に置いてるなら、もう突き放して!私が物珍しいんでしょう、何の経験もない生娘だから……!」
「美依……」
「私をからかってるの?!私には何も無いから、怖がって拒むような子だから」
「……っ!」
「反応を見て楽しんでるの?!私、一人馬鹿みたい…!」
「貴方をこんなに好きになって馬鹿みたい……!!」
────それは、美依の刹那の叫び
こいつは、こんなにまでも
自分を追い込み、傷ついてしまったのか
俺は……許せない
こんなにお前を不安にさせた、俺を
(────俺を許すな、でも)
「んっっ……!」
その桜色の唇を強引に塞ぐと、美依は儚い吐息を漏らした。
逃げようとする身体を、きつく抱き締めて。
舌も絡めとって、全てを奪う。
お前を不安にさせた、俺は駄目な男だ。
何者からも守ってやると誓ったのに。
────俺には、お前しか要らないのに
「……お前のその顔、見てるとくらくらするんだ」
やがて唇を離し、口づけで蕩けた顔の美依を見ながら呟いた。
それは、俺の刹那の恋心。
お前にしか抱けない、淡い泡沫より儚い感情。
「お前が名前を呼ぶだけで苦しくなるし、訳わかんねぇくらい恋しくなるし」
「政宗……」
「お前があの日、温もりをくれた日から…俺は、お前に溺れてる」
「あの日……?」
「お前が硝煙の匂いをさせて、俺に会いに来た事があっただろ?」
────あれはまだ、恋仲になる前の話
お前が光秀の元で、鉄砲の練習をしてから俺の元に会いに来た、あの日。
俺は酷く落ちていて。
お前が本当に息をしてるか、脈はあるのか。
『生きてる』って事を、肌で確かめたくて。
お前に襲いかかり、喉元に噛み付いて……
おかしくなった俺は、飢えて熱を求めていた。