〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第72章 君しか見えない-繋-❀伊達政宗❀
「ただいま、美依」
「おかえり、なさい……」
「なんで帰って来たのに会いに来ねぇんだよ、待ってたんだぞ」
「……っ」
すると、美依はくしゃっと顔を歪め。
問いには答えず、俺に背を向けた。
そして、後ろ手で襖を閉めようとしたので、慌ててそれを阻止しようと、美依の手を掴む。
だが、美依はそれを振りほどき……
振り向きもしないまま、言葉を紡いだ。
「帰って、政宗。今日は私、何言うか解んないから」
「……何でもいいから聞かせろよ、お前の声」
「政宗……」
「俺が居ない間、どうしてたんだ?寂しくなかったか?」
敢えて、平然と何も知らないように美依に問う。
美依は黙り込み、その華奢な肩を震わせていたが……
やがて、小さな声で。
俺の問いとは関係ない問いを、被せてきた。
「ねぇ…政宗、は……私のこと、すき?」
「ああ、誰よりもな」
「どこが……すき?」
「言って欲しいなら、言ってやるが…それってそこまで重要か?」
「……」
「ただ好き、じゃ駄目なのか?」
理由なんて上げれば、山ほどある。
だが、そんなのは俺はどうでもいい。
ただただ、お前が死ぬほど好きだ。
俺にとっては、それしか無いのだから。
だが──……
美依はそれでは納得しなかったらしい。
なんだか無理やり強気を装っているような、そんな声を張り上げた。
「違うでしょ?政宗、言えないんでしょ?」
「美依……」
「好きな所がないから、言えないんでしょう…?!無理しなくていいから、私解ってるから!」
「美依、あのな……」
「いいの、政宗は優しいから、私を傍に置いてくれてるんだもんね。こんな魅力もない子を…でも、同情しないで、そんなのは要らない」
(……んだよ、それ………!)
その言葉に、思わず怒りがこみ上げる。
俺が同情なんかで、お前の傍に居ると……
本気で言ってんのか、それ。
俺は、ぐっと美依の肩を掴んだ。
そのまま、怒りを滲ませた声が滑り出る。
「俺の目を見て、もう一回言ってみろ」
「……」
「美依っ!」
すると、美依は勢いよく振り返り。
俺の胸を、拳でドンッ!と叩いた。