〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第72章 君しか見えない-繋-❀伊達政宗❀
────そんなの、俺は知らねぇよ
だからって、人を傷つけていいもんじゃない
罵るなんて尚更、何様なんだ、お前
「身体だけだろ、好きなのは」
「ち、違っ……」
「そうにしか聞こえねぇよ。俺のいい所、そこだけなんだろ?」
「……っ」
「悪いな、沙羅」
────俺はもう、美依しか見えない
力づくで振りほどき、俺は沙羅を置いていった。
なんだか、泣く声が聞こえた気がした。
泣きたいのは、こっちなんだよ。
美依に会いたい、今すぐに。
早く会って…安心させてやらないと、あいつを。
涙なんか、流させない、絶対。
お前だけは、決して。
お前は、綺麗に笑っていれば、それでいいんだ。
お前を、死ぬほど幸せにすると誓ったから。
美依、俺は──……
お前のためなら、阿修羅にだってなれる。
*****
その足で城へと赴けば、美依は部屋に籠っているようだと女中から聞かされた。
陽の落ちた、薄暗い廊下。
俺は美依の部屋の襖の前で、思わず佇む。
なんて声を掛けるべきか。
沙羅の事がなくたって、ぎくしゃくしていたのに。
あいつがそれに輪を掛けたから、もっと拗れちまった。
(────だったら、いつも通りの俺で居よう)
俺は一回呼吸置くと。
美依の部屋の中に聞こえるように、声をかけた。
「姫様、もうお休みですか?」
そのまま、しばらく沈黙したが……
やがて、弱々しい声で返事が帰ってきた。
「まだ寝てません……どなたですか?」
(この分だと、泣いてたな、美依)
ずきり、と心が痛む。
だが、平然を装って。
俺はにっと笑い、不敵な声色でもう一度声をかけた。
「さて、どなたでしょう?」
すると、部屋から物音が聞こえ──……
そのすぐ後に、襖がゆっくり開かれた。
「まさ、むね……」
姿を見せた美依は、弱々しく。
目を真っ赤に腫らし、今にも崩れてしまいそうだった。
そんな美依を見て、心が揺らいだが……
あくまでもいつも通りを装い、俺は指で頬を優しく撫でた。