〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第72章 君しか見えない-繋-❀伊達政宗❀
「────政宗、居るか?」
と、その時。
襖の奥から声がかかり……
返事をすると、襖を開けて秀吉が姿を現した。
なんだか、妙にしかめっ面である。
なんか俺は、こいつに怒られる様なことをしただろうか。
「秀吉、どうした」
「お前、今日美依に会ってないよな?」
「ああ、来てないぞ」
「でも、沙羅は来ていただろ?」
「……なんで、それを知ってんだ?」
沙羅の名前が出て、思わず俺は眉をひそめた。
沙羅は昔の女である。
今はすでに無関係で、何をしているかも知らない。
そんな沙羅が訪ねてきたのは、正直意外だった。
沙羅とは公認ではなかったが、安土の武将達は皆、沙羅の顔を知っている。
目立つ女だからな、あいつ。
まぁ、秀吉が沙羅に会っていたとしても、興味はないが。
「俺が沙羅にお前が帰って来る日を教えたからな、だがそれは間違ってた」
「どういう意味だ?」
「政宗、早く美依に会いに行け、多分、美依は……」
「なんだよ、煮えきらねぇな。何の話をしにきたんだ、一から説明しろ」
俺が少し苛立ったように言うと。
秀吉は気まずそうに、後ろ頭を掻き……
『見たまんまの状況』を詳しく説明し始めた。
「あのな、政宗……」
*****
────すでに、夕焼けが裏路地に濃い影を落とす
赤々黒々とした道は、やけに不気味で。
家路につく子供達もおらず、しんと静まりかえっている。
そんな中、俺はひた走り……
沙羅の元に一目散に向かっていた。
(くっそ、ふざけんなよ、沙羅……!)
秀吉に聞いた、その話。
それは、俺を怒りの頂点へと誘った。
馬鹿げている、何様のつもりなのか。
沙羅に沸いた怒りと疑問は……
美依に会いに行く前に、先になんとかした方が良いと、そう思った。
秀吉の言葉を信じない訳では無いが……
本人の口から聞かねば、気が済まない。
何故。
何故、沙羅がそんな事をした──……?