〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第71章 君しか見えない-純-❀伊達政宗❀
(なんで、政宗の御殿から出てくるの……?!)
嫌な汗が背中を流れる。
落ち着け、私。
そう言えば、秀吉さんに帰る日を聞いていたし…
それで、帰ってきたから訪ねたとか。
頭の中で、ぐるぐると思考を巡らせていると。
沙羅さんは、御殿前で佇む私に気がついた。
「あなたは……」
「……っ」
ゆっくり近づいてきて、大きな瞳をくりくりさせながら、私を見る。
この人の目、なんか苦手だな。
品定めするみたいで、ちょっと見下した感あるし……
そう思っていると、沙羅さんは口の片端を上げ。
見惚れるくらいの、余裕たっぷりの笑みを見せた。
「まさなら中に居たわよ、久しぶりに会って、なんか歓迎されちゃった」
「そ、そうですか。じゃあ、私はこれで……」
「ちょっと待って」
私が話を切って行こうとすると、沙羅さんは鋭い口調で私を引き止めた。
その言葉に、縛られたように動けなくなる。
すると、沙羅さんは腕を組み、私をじっと見つめて。
なんだか、責めるような強い口調で話し出した。
「私ね、納得いかないの。何故まさがあなたのような、どこにでも居るような、普通の子を選んだのか」
「は、はぁ……」
「あなたはまさのどこが好きなの?やっぱり床上手だから?」
「は……?」
『床上手』と言う言葉に、思わず聞き返す。
私が反応を見せたのが楽しいのか、沙羅さんはふっと笑いを漏らし……
何かを思い出すように、少しうっとりしたように言った。
「彼、閨ではすごいわよね、とても情熱的で。導くのも上手いし…私なんて何回気をやったことか」
「は、はあ……」
「あなたは違うの?まさはそこがいいんじゃない」
「私、は……」
言えない。
怖くて、まだ抱かれてません、なんて。
返答に困り、口ごもってしまう。
でも──……
女は、そーゆー些細な部分に敏感だ。
私が何も言えないでいるのを、過敏に察したらしい。
沙羅さんは、また私を嘲笑した。
「え、まさかまだ抱かれてないとか?」
「……っ」
「あなた純朴そうだし、まさかとは思うけど……」
人には言われたくない言葉ってあると思う。
しかし、その女の子は……
無神経に、その言葉を紡いだのだ。