〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第70章 天色、椛、幸福の螺旋❀織田信長❀
「ん?美依、随分艶っぽい顔してんな」
と、家康の肩を借りている政宗が、美依の様子に気がついて可笑しそうに言った。
そーゆー事にはいち早く気がつく男だ。
口づけで蕩けてしまった美依は、この上なく愛らしいからな。
……それを口に出すと、惚気になるので言わんが。
「べ、別に普通だよっ」
「いや、顔は赤いが、酔ってるとは違うな…信長様と気持ちいい事でもしてたか?」
「ま、政宗っ……!」
「もうそのくらいにしとけ、政宗。帰るぞ、お前は家康の肩借りて自分で歩いてこいよ?」
「解ってるって、秀吉」
そして、またぞろぞろと移動していく五人。
その一番後ろから、美依と肩を並べてついて行く。
全く、どこまでも気丈で騒がしい奴等だ。
まぁ、そんな奴等のおかげで、今日の紅葉狩りでも美依は終始笑顔だった。
それは褒めて遣わすが……
酔っ払って絡んでくるのはやめてほしいところだ。
「信長様、あの……」
俺が美依の手を引き歩き出すと、美依はそれを握り返しながら、俺を見上げた。
まるで子犬のように、丸っこくて純な瞳。
それを目を細めて見下ろしながら、軽く首を傾げた。
「どうした」
「その、答えそびれちゃいました、お返事」
「なら、今聞かせろ」
「ええっ…みんなに聞こえちゃいます」
「なら、耳元で話せ……ほら」
一回立ち止まり、少し膝を曲げて美依の頭の高さに合わせてやる。
すると、美依は少し恥ずかしそうに、きゅっと口を噤み……
やがて、俺の耳元に唇を寄せて、小さな可愛らしい声で囁いた。
「信長様の気持ち、嬉しかったです。本当にありがとうございます。私、ずっとずっと貴方の傍に居ますね。だから…私を妻にしてください。貴方をお慕いしています。ずっとずっと…一生だいすきですよ、信長様」
(……っっ)
貴様の言葉は、本当に破壊力がある。
俺を惹きつけ、そして……
身動き出来ないほどに、全てを縛りつける。
奪われ続けろとは言ったが、それは本当は逆で。
俺の全てを奪ったのは貴様だ、美依。
それでもいいと思ってしまうあたり……
もう引き返せないくらい、貴様に溺れているのだな。