〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第70章 天色、椛、幸福の螺旋❀織田信長❀
「信長様……」
「どうした?」
「きちんと答えていいですか?そのっ…せっかく求婚していただいたので、言葉でも返したいですし……」
「美依……」
少し恥ずかしそうに、美依が視線を逸らす。
全く、今更ながら照れているのか、愛らしい奴め。
答えは解っていても、その唇から紡ぐ言葉が聞きたい。
俺がそう言うと、美依は頬を染め、小さく頷いた。
どんな愛らしい返答をしてくれるやら。
それ次第では、堪えるのが難しくなるやもしれん。
そんな幸せな悩みが頭をよぎった、その時だった。
「信長様〜〜!」
「これは、邪魔をしたのではないか?」
「政宗様、大丈夫ですか?」
「くっそ、足元がふらふらする……」
「飲み慣れないもん飲むからですよ、政宗さん」
林の方から、聞きなれた声が聞こえ、一気に騒がしくなる。
見れば、秀吉、光秀、政宗、家康、三成の五人が、わいわいと話をしながらこちらに向かってきた。
美依と一緒に身体を起こし、うるさい奴らを迎えながら……
邪魔をされたな、と内心苦笑した。
これからがいいとこだと言うのに。
美依の口から可愛い答えを聞いて、そしてまた口づけ絡まり合い……
そんな事を思っていただけに、少しだけがっかりする。
「貴様らは続けていろと言っただろう、秀吉」
「でももう酒もないですし、弁当も空ですし…陽も落ちてきて、政宗はふらふらだし」
「うるせぇ、寄って集って飲ませるからだろうが!」
「そーゆーあんたも負けじと飲むからでしょう、自業自得ですよ、政宗さん」
「下戸でも負けるのは嫌いなんだ」
「馬鹿だろう、政宗。俺と張り合うな」
「光秀、おまっ…一番煽ってきた奴が言うな!」
「政宗様、暴れると吐いてしまいますよ?」
(やれやれ、うるさい奴らだ、全く)
先程までの甘い空気を取り去らうかのように、騒がしい酔っ払い共。
それぞれが顔を赤くし、ぎゃーきゃーと……
俺は思わず呆れ返って、小さく息をついた。
何気なく美依を伺えば。
美依も困ったように笑い、でも手にはしっかりと木箱が握られていて。
甘い時間は、もう少しお預けかと。
焦れた心が少しだけ残念がって、熱を持て余している気がした。