〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第70章 天色、椛、幸福の螺旋❀織田信長❀
「んっ……」
そのまま、ゆっくり唇が重なる。
啄むように、軽く何度も唇を押し当て……
やがて、深く絡み合い、溶け合った。
隙間を割って忍ばせた舌に、美依も懸命に応えてきて。
それだけで、気持ちが伝わってくる気がした。
俺の事を愛していると。
そう気持ちが流れ込む感覚がした。
「んっ…はぁ……」
零れる吐息まで愛しい。
じわり、と熱を帯び始める身体も。
美依の全てが愛しくて堪らないから。
永遠に、俺の傍から離れることは許さん。
────トサッ……
次第に力が掛かって、美依の身体を草むらへと押し倒した。
まるでもつれ合うように抱き合い……
時間も忘れて、口づけだけを繰り返す。
交じる水音も、絡まる湿った息も。
狂おしいくらいに…俺を昂らせて。
二人だけの永遠を、ここに誓うのだと。
ただただ溺れながら、そう思った。
「はぁっ…はぁっ……」
「……美依………」
お互いを貪り、気の済むまで絡まり合って。
やがて、離れがたかった唇がようやく離れると、名残りの銀糸がつー…っと伝った。
二人で息を整えながら、見つめ合う。
いつしか蕩けた美依の表情は、まるでまだ足りないとでも言うかのように、切なげに揺れて。
俺は額をコツンと触れ合わせながら、潤んだ瞳を覗き込んだ。
「……今はそのような顔をするな、美依」
「え……?」
「ここでは貴様を愛でてやれない。このような場所で抱かれるのは嫌だろう?」
「あ、当たり前ですっ」
「だったら、愛らしい顔をするのは、帰るまで待て。俺が堪えられなくなるからな」
くすくすと笑って、仕上げに一回唇を啄む。
そして、しっかりと美依の手に握られている、木箱に視線を移した。
永遠に続く幸せを誓って。
貴様に求婚するならばと、選んだその石は……
夕陽に照らされ、煌(きら)りと眩く蒼い光を帯びていた。
絆を結んで、俺達の行く先に幸あらんことを。
まぁ、美依とだったら、何をしていても幸せだ。
だから手を繋ぎ、どこまでも歩いていく。
お互いを温め合いながら、歩幅を合わせて。
────なぁ、美依?