〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第69章 〖誕生記念〗満ちる月、君を想へば❀伊達政宗❀
「美依が帰ってきたら、晴れ着の着付け手伝えって言っとけ。美依の部屋で着るからな」
「はい、かしこまりました。お伝えします」
「それから、あんまり俺を焦らすなって言っとけ。じゃあな」
「え、政宗様?」
それだけ三成に言って、広間に背を向けた。
三成はまた首を傾げて不思議がっていたが……
お前も恋仲の女が出来れば解るぞ、と思う。
この俺の心をこんなに掻き乱して……
本当に美依は大した女だな。
誕生日ひとつで嬉しくなったり、イライラしたり。
今年の九月五日は、やたら心が忙しい。
これも全て、美依のせいだ。
────お前が、俺を惹き付けて離さないから
それから程なくして、美依は俺の着付けを手伝いに来た。
すでに陽は落ち、すっかり暗くなって。
美依と二人、久しぶりにたわいない話をしながら、支度を整えていく。
帯を結び、羽織を背中から着せながら……
美依は弾んだ声を上げた。
「うん、やっぱり晴れ着を着ると特別感が出るね!」
「そうだな」
「似合うよ、かっこいい!宴も楽しみにしていてね」
「……」
(俺の気持ちなんて、これっぽっちも解ってねぇんだろうな)
羽織を着て、美依の方に向き直ると、美依はいつものふにゃふにゃした笑みを浮かべている。
それに少しむっして、鼻を指でぴんと弾くと…
美依は『痛っ』と小さな声を上げて、手で鼻の頭をさすった。
「……今夜は覚悟しとけよ、美依」
「え?」
「お前がめちゃくちゃになるまで褥から出さない」
「ま、政宗っ……」
「この俺を振り回した事、後悔させてやる」
「えっ…それってどーゆー……っ…!」
今度は顔を近づけ、ちゅっと唇を軽く啄む。
驚いて目を見開く美依に苦笑しながら、そのまま腰を自分の方に引き寄せた。
温かいし、いい匂いがする。
首筋に鼻を埋めれば、それはさらに強くなって、俺の神経を鋭く過敏にさせた。
戦乱の世の中なのに、戦以外でこんなに心が湧き立ち、高ぶって。
それは美依が教えてくれた感情。
愛するって感情は、こんなにも刺激的で、俺を決して飽きさせないのだ。