〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第68章 蜜な想いはくちびるから《後編》❀徳川家康❀
「ねぇ……美依」
「ん?」
「美依は俺に口づけられて、気持ちに気づいたんでしょ?」
「う、うん……」
「じゃあ、それをしなかったら、ずっと好きになってもらえなかったのかな」
つい素朴な疑問が、口をついで出る。
『もしも』や『まさか』は考えてもキリがない。
それでも──……
前のままの俺だったら。
この想いは、美依には届かなかったのだろうか。
「家康……」
すると、美依はすっと手を伸ばし、俺の手をやんわりと握ってきた。
そのままふにゃりと笑って……
首を横に振り、柔らかい声で言葉を紡ぐ。
「そんな事ないよ。きっとね、気がつくきっかけなんて、色んな所に転がってると思うの」
「美依……」
「今回はたまたまそれがきっかけだっただけで…家康への想いはずっとこの胸にあったよ。でも、家康が一歩踏み出してくれたおかげで、早く気づけたから…本当にありがとう」
「……っ」
(ほんっとに…この子は、もう……)
馬鹿みたいに素直で、真っ直ぐで。
俺の考えている事を、容易く超えてみせる。
可愛くて、可愛すぎて……
心の余裕なんて、引っペがされてしまって。
結局、溺れてしまっているという現実を、ただ受け入れるしかないんだ。
だから………
────こうなった責任、取ってよね、美依?
「わぁっ……」
俺が握られた手を反対に掴み直し、ぐいっと自分の方に引き寄せると、美依は俺の方に倒れ込みながら、小さく声を上げた。
持たれかかる美依の顎を掬い、上を向かせて。
ほのかに上気する目元に軽く口づけながら、俺は湧き上がる熱のままに言葉を紡ぐ。
「美依って、俺を煽るの上手いよね」
「えっ……」
「でも、俺を素直にさせるのも、上手いよ」
「いえ、や……」
「美依」
想う気持ちは、赤裸々に。
あんたにだけなら、素直になってあげるよ。
────だから、もっと溺れて欲しい
「美依、大好きだから…もっと、あんたが欲しい。今度は褥で、俺に甘やかされてよ。もっと口づけさせて、あんたに…愛情を注がせて?」