第68章 蜜な想いはくちびるから《後編》❀徳川家康❀

「家康の事がすきっていう気持ちだよ」

「え……」

「家康に口づけられて、私恥ずかしくて、でも嬉しくて…家康の事がすきだからだって気づいたら、余計恥ずかしくて、顔も見れなくて……」

「……っっ」




可愛らしい唇から零れる想い。
それは、ひねくれた俺の心に、すんなり染み渡って。

そして、再度俺が聞きたかった言の葉が紡がれる。




「女性から男性の唇にする口づけは誘惑なんだよ。今以上の関係を望む時に、男性の唇に口づけるの」

「今以上の関係……」

「うん」



















「私も、家康のことが……だいすき」




















(…………っっ)


それは、俺が欲しかった気持ちだった。
美依の心、誰かを想う心の矢印。

俺に向いていればいいのにって、いつも願っていた。

俺が意を決して口づけた事は、美依の中の想いを自覚させ。
こうして今繋がって、俺にも伝わった。

俺の出た行動は……無意味ではなかったのだ。




「ほんと、馬鹿だ……俺」




思わず悪態をつくと、美依はクスッと笑った。
だったら、なんで政宗さんと口づけ合っていたんだ？

その疑問は晴れない、だからそれは美依に直接問いただすしかない。




「じゃあ、さっきはなんで政宗さんと口づけしてたの？」

「あ、あれは政宗にカマかけられたんだよ！」

「どーゆーこと？」

「私、家康が好きなんだけど、家康も私の事好きなのかなって話をしてて。口づけられたんだけど…って相談したら、確かめてやろうかとか言うから」

「言うから？」

「どうやって確かめるのかと思ったら、いきなり口づけられたの。まさか家康に見られてたとは思わなかったよ」

「……」




(まさか政宗さん、俺が居るの解ってて……)


角に隠れていたつもりだったが、政宗さんには解ってたんだな、俺が居たの。

本当にあの人はあなどれない。
そう思って、変な脱力感が襲う。

まぁ、そのおかげで想いは通じたんだが……

それでも、口づけられていたのは、いい気はしない。
色々嫌な想像もしたし、それに……

自分がまだ口づけていないのに、先を越されたのだから。