〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第67章 蜜な想いはくちびるから《前編》❀徳川家康❀
「…………だろ?」
「………から…………なの」
(ん?美依の話し声……?)
美依を探して、ある廊下の角に差し掛かった時。
角を曲がった向こうから、美依らしき声が聞こえた。
思わず立ち止まり、聞き耳を立てる。
角の向こう側から聞こえる、聞きなれた可愛らしい声。
やはり美依だ、でも誰かと話している?
なんとなく、それを邪魔するのは気が引けて…
俺は、その場で息を潜めながら佇んだ。
「簡単な事だろ?」
「でも、違ったら……」
「じゃあ確かめてやろうか?協力するぞ」
(美依と、政宗さん……?)
相変わらずの自信に溢れたあの声は、間違いない。
でも、何を話しているんだろうか。
そんな事を思っていると、不意に二人の話し声が止んだ。
俺は不思議に思い……
二人の姿を確認しようと、そのまま角を曲がった。
────そして、目に映った刹那の光景
(え…………?)
美依の腰を自分の方に引き寄せる政宗さん。
片手はしっかり美依の後ろ頭を抱え。
そして──……
二人の顔は、真正面で重ねられていた。
「んっ……!」
小さく漏れるのは、美依の切なげな吐息。
そう、二人は。
────口づけ合っていた
「……っっ」
思わず声を出しそうになって、手で口を塞ぐ。
なんだこれ、なんだこれ。
なんで、なんで政宗さんと美依が?
瞬時にカッと頭に血が上る。
だって、美依の唇は。
美依の口づけは……
────俺が欲しいものなのに
なんで政宗さんに大人しく口づけられてるの?
俺が髪や耳にしただけで、逃げたのに。
唇に口づける、その意味は『愛情』
恋仲同士の証で。
『愛してる』と言う言葉の代わりで。
それはつまり、そーゆー事で。
美依、あんた
政宗さんが、好きなの──……?