〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第67章 蜜な想いはくちびるから《前編》❀徳川家康❀
「……っっ!!」
気がつけば。
俺は美依の肩を掴み、政宗さんから引き剥がしていた。
美依が驚いたように、振り返る。
その目は色付いて、若干潤んでいて。
少し濡れた唇が、艶やかに光っていて。
────なに煽情的な顔になってんの、あんた
「い、えや……!」
「美依、ちょっと来て」
「え、家康、え……?!」
有無も言わさず、美依の手を引いて、逆方向に歩き出す。
こんな感情、みっともない事は解ってる。
嫉妬、羨み、逆上。
どれもがしっくり当てはまる気がした。
美依は俺のものなのに。
その愛らしい表情や、仕草や、
可愛らしい声も、柔らかい身体も、
美依を彩る全ては、自分のものだと。
全て全て、自分のものにしたいと。
独占欲、嫉妬心、焦燥。
止まらない、それらがまみれて。
────美依、あんたの口づけは俺のでしょ…?
「ぷっ…おもしれぇことになってんな」
政宗さんが、背中の向こうで愉快げに呟いたのが聞こえた。
それすらも無視して。
美依を連れて、早足で立ち去る。
これから起こるであろうこと。
それは、美依をめちゃくちゃに傷つけるのか。
自分も、めちゃくちゃに傷つくのか。
それでもいい。
美依の気持ちも、俺の気持ちも。
そんなのは関係ない。
────美依さえ奪えれば、それでいい
いつしか、時刻は逢魔が時
夕闇が鮮やかな世界を黒く塗りつぶすように
俺の心にも、魔物が生まれるんだ
囁く言葉は魔法のように
唇から与える熱で、全てを蕩かせ
口づけは、愛情のしるし
俺の愛を受け止めてよ
満腹になるまで、与えてあげる
それは、あんたにだけの特別な感情
みっともなくても、我欲が強くても
灼熱に燃ゆる、俺の恋情。
《蜜な想いはくちびるから〖前編〗》終
《蜜な想いはくちびるから〖後編〗》に続く