〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第67章 蜜な想いはくちびるから《前編》❀徳川家康❀
「そうすれば…さり気なく想いが伝わるんじゃない……?」
俺は胡座を掻き、そこに頬杖を付きながら……
そんな事を思い、ぽつりと呟いた。
美依だって、きっとこれを読んでる。
なら、俺がこの書物のような行動を取ったとしたら。
きっと美依は気づく、俺の想いに。
拒まれたら、その時はその時だ。
でも、拒まれなかったら……
(……よし)
意志が固まり、頬杖とは逆の手をぎゅっと握る。
今までは受け身だった、でも…
『愛情表現』なのだ、口づけと言うものは。
それで、美依に好意を示したって、構わないだろう?
だって、美依が好きなんだから。
あの子を手に入れたいと思う事は、悪い事じゃない。
きっと、この本を見つけたのも、何かの縁だ。
だったら…この好機、逃したりはしない……!
────俺はその夜、徹夜で知識を頭に叩き込んだ
そして、まるで戦略を立てるように、口づける場所の吟味を重ね……
美依を想いながら、夜は明けていった。
────…………
(えぇと、美依は……)
次の日の午後。
軍議を終えた俺は、美依を探して城中を歩き回っていた。
今日の軍議には、珍しくあの子は呼ばれなかったから…
まぁ、軍議の内容は、見張りと兵糧の残量の報告だけだから、美依が居る必要はないのかもしれない。
俺はと言うと、昨夜頭に叩き込んだ知識を、いつ実践するかと、そればかりが頭を駆け巡って。
軍議にあまり集中していなかったのは、申し訳ないと思っていても……
美依の事も自分にとっては重要事項なので、今回は見逃してくれと自己完結した。
(────居た)
もしかしたら、今日も料理の練習をしているかもしれないと思い、城の台所を覗くと、案の定。
いい匂いを中から漂わせながら、一人竈(かまど)に向かう美依の姿があった。
政宗さんは居ないのかな?
そうは思ったが、これは絶好の機会かもしれない。
俺はそんな事を思い、後ろから美依にそっと近づいた。